現在、パチスロ業界ではスマスロ(メダルレス機)が主流になっている。
メーカーや一部のユーザーは「メダル補充の手間がない」「衛生的」「効率的」とメリットばかりを強調するが、私は非常に大きなデメリットもあると感じている。
私はジャグラーなどのノーマル機を中心に打つタイプで、これまでスマスロは北斗を少し触る程度だった。しかし、最近BT機が登場したことでスマスロに触れる機会が少しずつ増えている。
そんな中で気づいたことがある。メダル機を打っている時と比べて、スマスロを打っている時は明らかに体調が悪くなるのだ。最初は自分だけかと思っていたが、知り合いのスロッターに話を聞いてみると、同じような違和感を抱えている人が意外と多いことがわかった。
この違いは何なのか?科学的な根拠はあるのか?そのあたりを調べてみた。
スマスロで体調が悪くなる理由を考えてみた
最初は「気のせいかな」と思っていたが、何度打ってもやはり調子が悪い。メダル機では問題ないのに、スマスロだと決まって肩・肘・腕が痛くなり、体全体の疲労感も強い。この違いは何なのか考えてみた結果、ある仮説に辿り着いた。
メダル機では小さいながらも多様な動作がある。
下皿でメダルを整え、投入口に入れやすいよう準備し、定期的に投入する。払い出されたメダルは整理が必要で、たくさん出れば箱に移す作業も発生する。たまに落としたメダルを拾うこともある。
一方、スマスロではレバーを叩いてボタンを押す。それだけだ。基本的にすべての動作が体の正面の狭い範囲で完結する。
この動作の違いが、体調不良と関係しているのではないだろうか。
科学的根拠を調べてわかった健康リスク
この仮説を裏付けるため、医学的な情報を調べてみた。すると、私の体験は科学的にも説明できることがわかった。
反復運動過多損傷(RSI)
一定の姿勢や動作を長時間繰り返すことで、神経・腱・筋肉に損傷や炎症が起こる障害を「RSI」という。スマホ腱鞘炎やマウス症候群と同じ原理だ。レバーを叩き、ボタンを押すという極めて限定的な動作の反復が、手指・手関節・肘への持続的な負荷となる。
胸郭出口症候群
猫背姿勢で首から腕に向かう神経や血管が圧迫され、腕や手のしびれ、肩こり、首の痛みなどが起こる疾患だ。スマスロでは体の正面だけで動作が完結するため、肩が内側に入り胸郭が閉じる。これはデスクワークと同じメカニズムで、発症リスクがある。
自律神経失調症状
胸郭が閉じた前傾姿勢により呼吸が浅くなり、自律神経のバランスが崩れる。浅い呼吸では交感神経が優位になり、血管が収縮して血圧が上昇。体のだるさ、睡眠障害、消化器症状、めまい、動悸、免疫機能低下などが起こり、高血圧や心臓病のリスクも高まる。
VDT症候群(テクノストレス)
VDT症候群は、パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けることで起こる症状だが、スマスロも本質的には同じだ。厚生労働省の調査では、VDT作業で身体的疲労を感じる人は68.6%にのぼり、作業時間が長いほど不調の割合が高い。
かくいう私も、VDT症候群持ちである。
メダル機を打つ際の小さな動作には意外な健康効果があった
調べてわかったのは、日常の小さな動作の累積が健康に大きな影響を与えるという運動生理学の知見だ。これを「NEAT(非運動性活動熱産生)」という。
例えば、メダル機で高頻度で行われる「メダル投入」。数十秒に1回、肩を動かし、体幹を軽く回旋させ、胸を開く。この小さな動作が、長時間座位による健康被害を部分的に緩和していた可能性が高い。
メダル投入をスムーズにするために手の中でメダルを整えたり、出たメダルを下皿に収める動作も高頻度で発生する。メダルをつかむ・握る・揉むという動作は、前腕の筋肉を「収縮→弛緩」させる。これは筋ポンプ作用により血流を促進し、筋疲労を軽減する効果がある。1日数千回のこの動作が、知らず知らずのうちに血行改善と筋力維持に貢献していたのだ。
その他、「メダルを落として拾う」という動作も一見無駄に思えるが、これさえも固定姿勢を強制的に中断し、全身の協調運動と血流改善をもたらす効果が期待できる。
対してスマスロでは、レバーを叩く単一方向の反復とボタンを押す単純動作のみ。メダル機で行われていた小さな動作の累積はなく、わずかな健康効果も期待できない。
スマスロのメリットは確かにあるが…
誤解のないように言っておくが、スマスロのメリットも間違いなく存在する。
メダルの扱いが不得手な人にとっては、手先の器用さや経験が必要なメダル投入、箱にメダルを詰める作業などが不要となることで、回せるゲーム数が増え、純粋にゲーム性を楽しめる。衛生面でも、不特定多数が触るメダルへの抵抗感が解消され、コロナ禍以降の非接触ニーズに応えている。
個人的にスマスロで良かったと思うのは、迷惑なドル箱シェイカーやクレオフオカルター、他人が落としたメダルを拾う乞食の消滅くらいだ。ただし、前述のメリットを否定するつもりはない。
問題は「トレードオフが議論されていない」ことだ。
効率化、衛生面、一部マナー改善というメリットを得た代わりに、頻繁な微細動作による健康効果、姿勢変化の機会、上半身の多様な動きを失った。
最大の問題は、このデメリット(健康リスク)が十分に情報提供されていないことだ。利用者は知らないうちに健康を害している可能性がある。
パチスロ業界全体の「健康軽視」という問題
実は、この問題はスマスロに限らない。
以前の記事でも書いたが、パチスロの強烈な光やフラッシュは、光感受性発作のリスク、眼精疲労の悪化、片頭痛の誘発、自律神経への悪影響を引き起こす。私のようなVDT症候群傾向がある人間には特にきつい。騒音も、難聴リスクや持続的なストレス、交感神経の過剰興奮をもたらす。
これらに共通するのは、「ユーザーの健康」という視点の欠如だ。
なぜこんなことが起きるのか?
演出の派手さは集客力につながり、効率化はコスト削減になるが、健康配慮は利益につながらない。職場には労働安全衛生法やVDTガイドラインがあるが、娯楽施設には実質的な規制がない。
「嫌なら打たなければいい」という自己責任論で片付けられ、健康リスクの情報提供義務もない。
まとめ
メダル機・スマスロ機問わず、長時間座位による循環器リスクや下肢の血流悪化といった問題はある。しかしスマスロには、それに加えて上半身固定化による悪影響、反復運動過多損傷、胸郭出口症候群、自律神経失調といった追加リスクがある。
若者は多少の無理がきくため、直ちに明確な症状が現れるわけではない。しかし健康への悪影響は確実で、体へのダメージは着実に蓄積されているだろう。無理のきかない私のような中年スロッターや高齢者については、言うまでもない。
「それならスマスロを打たなければいいのでは?」という声も聞こえてきそうだが、現在の流れではジャグラーがメダル機の最後の砦になるのはほぼ間違いない。近い将来、スマスロを打たないということは、パチスロをやめることと同義になると思う。
スマスロを打つ際に個人でできる対策としては、1時間に1回は必ず立ち上がること、意識的な深呼吸やストレッチを取り入れること、アームスリーブや弾性ストッキングの着用、「握る→開く」動作を意識的に取り入れる、そして症状が出たら無理しないことなどが挙げられるだろう。
業界には、健康リスクの積極的な情報提供や人間工学的な台設計、光・音の見直しを検討してもらいたい。
参考情報
- 日本整形外科学会「胸郭出口症候群」
- 済生会「胸郭出口症候群とは」
- 厚生労働省「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(2002年策定)
- 日本成人病予防協会「呼吸(腹式呼吸・鼻呼吸)の効果とは?」
- 時事用語事典「反復運動過多損傷(RSI)」

