©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活製作委員会
©DAITO GIKEN,INC.
「Re:ゼロから始める異世界生活」、略して「リゼロ」がスロット化し、2019年3月から大都技研より販売されることになったようだ。
この「リゼロ」は書籍化を目指している小説家の卵が作品を投稿している「小説化になろう」という日本最大級の小説投稿サイトに2012年から連載されている、俗にいう「異世界系小説」のひとつ。
著者である長月達平氏は小売店の精肉部門の仕事をしつつ、この「リゼロ」を執筆し、トップクラスの売れっ子ライトノベル小説家になった、まさにジャパニーズドリームの体現者ともいうべき人物だ。
この作品を一躍世に知らしめたのはやはり2016年のアニメ化だろう。
「アニメリゼロ」は「STEINS;GATE」や「ヨルムンガンド」などを制作した実力派アニメ制作会社「WHITE FOX」が制作を担当し、長月氏の良く言えば丁寧な、悪く言えば冗長な地の文や難解なストーリーをライト層にも楽しんでもらえるように上手く落とし込んだ良作だ。
私自身、この作品がまずまず好きでアニメも全話見たし、小説の方も読ませてもらった。
基本ノーマルしか打たない私だが、「パチスロリゼロ」は前々から気になっていたので、どんな演出になるのか楽しみにしていたのだが、PVを見た限りでは大都には失望したと言わざるをえない。
追記
一撃のパチスロ新台試打解説動画が出ていたが、予想していたより遥かに酷い演出群で驚いた…
確かに「アニメリゼロ」が多数の人から支持を得ることができた理由として「エミリア」や「レム」といったヒロインの可愛さが大きな要因のひとつだと思うが、これほどまでにヒロインの可愛さや萌え的な部分を前面に出す必要があったのだろうか。
ただのキャラ好きではなく、「リゼロ」という作品が好きな人の多くはこんな量産型萌えパチスロ台になったことに失望していることだろう。
私はアニメより小説派だが、前述のとおり「アニメリゼロ」も制作会社「WHITE FOX」と渡邊政治監督、シリーズ構成の横谷昌宏氏、音楽担当の末廣健一郎氏らのおかげで良作に仕上がっている。
主題歌も人気があるものが多く、オープニングは大都の公式サイトで流れている「鈴木このみ」さんの「Redo」、「MYTH & ROID」の「Paradisus-Paradoxum」、エンディングは「MYTH & ROID」の「STYX HELIX」、「高橋李依」さんの「Stay Alive」など名曲揃いだ(私はエンディングの「STYX HELIX」が一番好きだ)。
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それから挿入歌も7、8、14、18話で流れるのだが、「STRAIGHT BET」(第7話)、「ぼうやの夢よ」(第8話)、「theater D」(第14話)、「Wishing」(第18話)とどれも印象深い。
「パチスロリゼロ」が販売されると知ってから、久しぶりに全話見たくなって「dアニメストア」で数日に分けて見たのだが、相変わらず面白かった。
細かなストーリーなどについて書くと何日もかかりそうなのであらすじは大都のサイトから引用し、主人公とヒロイン2人について簡単に書いてみたいと思う。
コンビニからの帰り道、突如として異世界へと召喚されてしまった少年、菜月昴。
頼れるものなど何一つない異世界で、無力な少年が手にした唯一の力……それは死して時間を巻き戻す《死に戻り》の力だった。
大切な人たちを守るため、そして確かにあったかけがえのない時間を取り戻すため、少年は絶望に抗い、過酷な運命に立ち向かっていく。
あらすじは概ねこのとおり。
主人公は「菜月昴(なつきすばる)」という少年で、大都のキャラクター紹介にはこう書かれている。
無知無能にして無力無謀と四拍子欠けた主人公。突如として異世界に召喚され、訳の分からない状況に翻弄される。物怖じしない性質と持ち前の図々しさで、逆境に弱音を吐きつつも過酷な運命に立ち向かっていく。
無知無能にして無力無謀とダメダメ主人公のように書かれているが、実際は地頭の良さや高い身体能力、人たらしの才を持つ非凡な人物。
だが、偉大な父の存在に押し潰され、次第に道を踏み外して自分自身を信じられなくなり、ひきこもりになってしまったのだ。
そして、将来が見えなくなっていた時に突然異世界に召喚されるという話。
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「これくらいの絶望で俺が止まると思うなよ」(第21話「絶望に抗う賭け」から)
異世界召喚され右も左も分からない時、メインヒロインである「エミリア」に助けられ、彼女の優しさに心惹かれる。
《嫉妬の魔女》に与えられた「死に戻り」の力とエミリアや「レム」の支え、鋼のメンタル、高いコミュ力、機転によって何度も何度も絶望的な状況を乗り越えていく。
よく「うるさい」とか「うざい」とネット上で書かれているが、その時その時のスバルの心情を推し量れば許容できることも多い。
「鬼がかる」という言葉を作中で何度も使うが、スバル曰く、神がかるの鬼バージョンとのこと。
アニメではまだそこまで進んでいないが、原作小説では父との会話を経て、過去の情けない自分と決別している。
「俺の名前はナツキ・スバル。菜月・賢一の息子だ。――だから、なんだってやれるし、なんだってやってやる。あんたの息子、すげぇんだぜ」
スバルの声を担当している「小林裕介」さんの熱演にも注目だ。
メインヒロインはこの世界で怖れられる《嫉妬の魔女》と同じ銀髪のハーフエルフ「エミリア」。
大都のキャラ説明は以下のとおり。
銀髪に紫紺の瞳を持つ美しい少女。
お人好しで面倒見の良い性格だが、当人はなぜかそれを素直に認めようとしない。
家族同然の猫精霊であるパックをお供に連れており、彼の前でだけ甘えた表情を見せる。
《嫉妬の魔女》と容姿が似ていることから世界から不当な差別を受けている。
頑張りやで純粋無垢、困った人を見過ごさない心優しい性格で、ルグニカ王国の次期国王を選ぶ王選の5人の候補者の1人。
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「あの子は今泣いている、そうでしょスバル!」(第1話「始まりの終わりと終わりの始まり」より)
スロットのフリーズ演出にも使われているらしい18話の「レム」の告白演出も良いが、どれだけ頑張っても努力しても未来を変えられず疲れ果てて心が折れそうになっているスバルを優しく癒すエミリアの膝枕の場面(第8話)も好きだ。
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「俺頑張ったんだよ、頑張ってたんだよ、必死だった、必死でいろいろ全部良くしようって頑張ったんだよ!」(第8話「泣いて泣き喚いて泣き止んだから」より)
見ていて可哀想になるくらい酷い目にあうスバルを膝枕して優しく慰めるエミリア。
エミリアの声を担当している「高橋李依」さんの演技と挿入歌の「ぼうやの夢よ」(歌:エミリア)の優しい声も相まって18話に負けないくらい素晴らしい回だったと思う。
スバルを監視しているレムに対して「レム、スバルはいい子よ」というところも◎。
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「――されて嬉しい特別扱いなんて、生まれて初めて」(第25話「ただそれだけの物語」より)
アニメ最終回25話のスバル告白シーンもとても良かった。
「エミリアが好きだから」
「銀色の髪で、ハーフエルフで、魔女と見た目が似てるからっていろんな人から疎まれてるし、嫌われてるの。ほんとにすごーく嫌われてるの」
「見てた、知ってる。見る目のないやつらだよ」
「君が自分の嫌いなところを10個言うなら俺は君の好きなところを2000個言う。俺は君をそうやって俺の特別扱いしたいんだ」
このあたりのシーンを見ていて、なお糞みたいな萌えパチスロ台に仕上げようと思ったのなら、スロ担当者の頭の中をのぞいてみたいものだ。
そしてもうひとりのヒロインは青髪の鬼族「レム」。
大都のキャラ説明は以下のとおり。
名誉の負傷をしたスバルが担ぎ込まれた屋敷で、雑務全般を一手に担う双子メイドの妹。
慇懃無礼な毒舌担当。
屋敷の機能が維持されているのは、彼女の有能さが全てといっていい。
鬼族ゆえに身体能力が非常に高く、重量のあるモーニングスターを振り回す物理戦闘を得意とする。
精神的に脆く過度に自身を卑下することがあり、暴走することもしばしば。
ただ、基本的には穏やかな性質で心を許した相手には献身的で、自己犠牲も厭わない。
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鬼化することで常時を遥かに凌ぐ力と回復力を発揮するが、制御ができず暴走してしまうことも。
敬愛する姉である「ラム」の障害になると判断したスバルを容赦なく嬲殺しにするなど、やると決めたらやる”スゴミ”を備えたヒロイン。
「魔獣騒動」を解決するためにスバルと共闘。
9話-11話で何度も命をかけて自分のことを守ってくれ、自分の忌まわしい過去と決別させてくれたスバルを心の底から信頼し、好きになる。
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「――鬼がかってますね」(第11話「レム」より)
自分のことをずっと姉のラムの代替品だと言い聞かせ、後ろ向きに生きてきたレム。
そんなレムにスバルは、代わりなんかいない、ラムにはないものがレムにあると言い、優しくて努力家で一生懸命だと良いところを挙げる。
「笑いながら肩組んで、”明日”っていう未来の話をしよう。俺、鬼と笑いながら来年の話をすんの夢だったんだよ」
この瞬間、レムは前を向きスバルと一緒に未来へと歩みたいと思ったのだろう。
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「レムは信じています、レムを救ってくれたスバルくんが本物の英雄なんだって。――レムはスバルくんを愛しています」(第18話「ゼロから」より)
何度も何度も失敗を繰り返し、精神をすり減らしても望む未来へ辿り着けないスバルは、自分自身を信じられないようになって自暴自棄に。
全てを捨てて自分と逃げようと言うスバルに対して、レムは心の底から嬉しいけれどそれでは自分の好きなスバルを置き去りにしてしまうと言う。
そして、諦めることはスバルには似合わないと続け、本当のスバルは、自分の大好きなスバルは絶対に諦めないと強く主張するのだった。
「おまえに何が分かる!……俺はこの程度の男なんだよ!力なんてないのに望みは高くて、知恵もないくせに夢ばかり見てて、できることなんてないのに無駄に足掻いて……俺は、俺は俺が大嫌いだよ!」
「いつだって口先ばっかりで、何ができるわけでもねえのに偉そうで、自分じゃ何もしないくせに文句つける時だけは一人前だ。何様のつもりだ!よくもまあ恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなぁ。なぁ!からっぽだ、俺の中身はすかすかだ。決まってるさ……。あぁ当たり前だ、当たり前に決まってる」
「俺がここに来るまで、こうしておまえたちに会うような事態になるまで、何をしてきたか分かるか?……何もしてこなかった。何一つ俺はやってこなかった。あれだけ時間があって、あれだけ自由があって、何だってできたはずなのに何にもやってこなかった。その結果がこれだ。その結果が今の俺だ。俺の無力も無能も全部が全部、俺の腐りきった性根が理由だ。何もしてこなかったくせに、何かを成し遂げたいだなんて思い上がるにも限度があるだろうよ」
スバルのこの台詞が胸に刺さらない人は今も昔も素晴らしい人生を送っている有能な人間だろうと思う。そうではない私にはグサグサ刺さった。
自分がいかに情けない人間か、そして醜い人間かを吐露するスバル。
レムはこんな情けない発言を聞いてもなお”自分の知っているスバルは「自分を救ってくれた英雄」だ”と言い、スバルの良いところ素晴らしいところを延々と挙げ続ける。
レムを”盲目的にスバルを慕う都合の良いヒロイン”のように言う人もいるがこれは全くの逆で、レムほどスバルに難しい課題を突き付けるヒロインはいないだろうと思う。
そもそも、レムを救うために何度も死に戻り、時にはレムに殺されることもあって、それでも前を向き進み続けたスバルだからこそレムの信頼を得ることができたのであって、他の誰にもそんなことはできなかっただろう(7話の崖からの飛び降り自死とかは絶対に無理)。
自分の実力以上に自分を評価するレムの理想を壊さないように努力することを誓うスバル。ここから真の主人公としてスバルは目覚ましい成長を遂げる。
18話は挿入歌の「Wishing」(歌:レム)の良さといい最高のシーンなのは確かで、フリーズ演出にはふさわしいと思う。
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「これからもレムを隣に置いてくれますか?」(第21話「絶望に抗う賭け」より)
白鯨攻略戦を終え、勝利を噛み締める二人。
傷ついたレムを置いてスバルはエミリアの元へと向かうが、これが二人の長い長い別れに。
主人公とヒロイン2人をざっと説明するとこんな感じに。
「パチスロリゼロ」はわざわざ萌えを押し出さなくても普通にシリアスな演出中心で十分だと私は思うのだが、エミリアやレムはキャラが立っているので萌え台にした方が楽だったのだろうか。
今回説明したヒロインたち以外にも私が一番好きな人工精霊「ベアトリス」や剣鬼「ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア」等、たくさんの人物がPVで紹介されていた(復活演出はやっぱり剣聖ラインハルトだろうか)。
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パチスロでは白鯨攻略戦が大きな鍵を握りそうなので「ヴィルヘルム」の出番は多そうだ。
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若き日のヴィルヘルムとテレシアの話なんかをチャンスアップなんかで挿入された時には思わず泣いてしまうかもしれないので気をつけなければと思っていたが、多分今の感じの台の出来なら心配する必要もなさそうだ。
パチスロ化するということで初めて「リゼロ」を知ったという人は是非アニメを見て欲しい。
少し前まではアマゾンプライムでも見られたのだが、今は見られなくなっているので月額400円ちょいで加入できる「dアニメストア」がおすすめだ。
「アニメリゼロ」は作画もあまり崩れることなくラストまで安定しているし、オープニング曲やエンディング曲、挿入曲も素晴らしい。
それから音響監督の明田川仁氏の絶妙の音作りや、末廣健一郎氏の劇伴などもアニメのレベルを1段上げている。
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「なろう」だから「異世界もの」だからという偏見を持たずにフラットな気持ちで、キャラクターの心情に注目して見てもらえば良作だというのが分かってもらえるはず。
まだ全ての演出を見たわけではないので何とも言えないが、この作品をただの萌え台パチスロ機にしたのなら非常に罪深いことだと思う。