先日、ネットのまとめ記事でこんな一節を見かけた。
新規ユーザーの為に今は低貸しがある、なんて言う業界人が非常に残念。下手すりゃ1番勝率低い場所だろ。逆なんだよ、そんなとこに新規ユーザーを近寄らせちゃいかんのよ
これを見て、私は深く頷いた。
私は元々パチスロのノーマルタイプを中心に立ち回っていたが、2006年頃から「甘デジ」(遊パチ)の面白さに目覚めて、どっぷり浸かった時期がある。しかし振り返ると、もう何年も腰を据えてパチンコを打っていない。理由は単純で、全く回らなくなったからだ。
1パチの罠:初心者を殺す「時間の浪費」
「初心者にはまず1パチから」という業界の常識。これが実は新規獲得を阻害している最大の要因だと思っている。
数字で考えてみてほしい。普通の店なら4パチで1000円15回くらいは回る(これでも酷いが)。玉単価が4分の1の1パチなら、同じ釘調整で理論上4倍、1000円60回になるはずだ。
しかし実際の1パチはどうか。酷い店なら1000円で30〜40回しか回らないこともザラにある。つまり4パチ換算で「1k 7.5〜10回転」という異次元のゴミ釘だ。
多くの店で、実は4パチの方がはるかに回る。1パチは「少ない投資で遊べる」のではない。同じ負け額に到達するまで時間がかかるだけで、その過程で得られるのは何も起きないデモ画面を眺める虚無だけだ。しかも換金率が悪いため、当たっても実質的なリターンが小さい。結果的に勝率は最低クラスになる。
新規ユーザーにこれを勧めるのは、「じわじわ負ける体験」を刷り込んでいるに等しい。「全然当たらないし、当たっても大して出ない」、そんな印象を持った客は二度と戻らない。
業界側は「1パチで慣れてから4パチへステップアップしてもらう」と考えているのかもしれない。だが現実には、1パチ客が4パチに移行することはほぼないだろう。
理由は単純だ。1パチで「千円で1000玉」という感覚が身についた人間が、4パチで「千円で250玉」を体験したとき、4倍の速度で金が溶けていく恐怖に耐えられない。
心理学でいう「アンカリング効果」と「損失回避」が働く。最初に刷り込まれた基準から見て、4パチは常に損に感じてしまうのだ。
昔は違った。4パチしかなかったから、それが普通だった。1パチという選択肢が存在すること自体が、4パチへの心理的ハードルを作っている。
4円甘デジの本来の魅力
私が初心者に本当に勧めたいのは、「回る4円甘デジ」だ。
確率は1/99前後。ミドルの1/319と比べて3倍以上当たりやすい。1〜2万円持っていけば、確率上は数回の初当たりと連チャンを楽しめる。
甘デジの魅力は「大当たり体験の密度」にある。役物が動き、音が鳴り、玉が出る。パチンコ最大のご褒美を何度も味わえる。
そして何より、スロッターの私にとって重要だったのは、知識と技術がダイレクトに結果につながる点だ。
釘を読んで期待値のある台を選ぶ。常識的な技術介入で出玉を維持or微増させる。運否天賦の「ギャンブル」ではなく、考えて打つ「遊技」としての奥深さがそこにはあった。
甘デジ黄金期:あの頃のホールには名機が溢れていた
私が本格的に甘デジを打ち始めたのは2006年頃、「甘海物語SAE」や「甘北斗の拳STV」あたりからだ。あの頃のホールには名機が溢れていた。
平和:甘デジの絶対王者
当時の平和は間違いなく、このジャンルのトップだった。
「甘戦国乙女」は初代、2と本当に面白かったが(3も許容範囲)、私が最も熱くなったのは、かなり後に出た「甘銀河乙女」だ。
画像引用:銀河乙女|平和公式サイト
演出も音楽も素晴らしかったが、異次元に甘いスペックも大きな魅力だった。ある時、「1k 30回」回る台を見つけた時は心が躍ったものだ。
ハマっても痛くないし、当たれば増える。一日打ち倒して7万円勝ちを記録したが、金額以上にパチンコを攻略しているという満足感が凄まじかった。回る甘デジの「無敵感」は設定6のノーマルタイプ以上の安心感を与えてくれるのだ。
例外として「甘百花繚乱サムライガールズ」も挙げたい。

正直スペックは甘くなかった。釘も辛めに使われている店が多かったので、私の信条である「ボーダー以下は打たない」に反する時も多々あったが、この台だけはボーダー-2くらいまでなら触ることもあった。
豪華すぎる声優陣、通常演出のまま消化できる時短、そしてツンデレで爆発力大の突破型スペック。「嫌いなところが本当にない神台」だった。コンテンツ愛があれば、多少の釘の渋さはカバーできる。当時の平和にはそれだけのパワーがあった。

タイヨーエレック:甘デジの代名詞
個人的には「甘デジ=タイヨーエレック」という感じで、圧倒的な存在感があった。オリジナル版権で勝負する姿勢が好きだったし、版権モノも原作をリスペクトした作り込みだった。
「甘伝説の巫女」は和風ファンタジーの世界観で、イートレックジャパンによるコミカルで可愛い演出が魅力。同じイートレックジャパン系では「甘ひかる源氏」も面白かった。
「甘サムライチャンプルー」はカセット役物による巻き戻し・早送り演出が斬新だった。「ペルソナ3」はダークな雰囲気をしっかり再現し、「絆システム」で原作のコミュ要素をパチンコに落とし込んでいた。
派手すぎず、世界観が丁寧に作り込まれていて、パチンコに馴染みがない人でも演出を楽しめる。エレックを吸収したサミーの台にあの頃の面影はない。本当に惜しいメーカーを失った。
マルホン:今は苦しいが、あの頃は輝いていた
今はなかなか苦しい状況だが、当時はマルホンも輝いていた。
「甘ビックリマン2000」は私の歴代トップ3に入る名機だ。レアカード演出で「ビーストデミアン」が出た瞬間の脳汁は格別だった。ビックリマンチョコを集めていた世代にはたまらない台で、当たるたびに童心に返れた。
「村松誠コレクション」のような癒やし系の台が置ける余裕も、当時のホールにはあった。
サンセイR&D:映像美の極み
映像と音楽のセンスが抜群だった。サンセイといえば牙狼だが、実は私は牙狼以前のサンセイの方が好きだったりする。
特によく打ったのは「甘バジリスク」。GONZOによる描き下ろしアニメーションと豪華声優陣が特徴で、人別帳の疑似連演出は原作の雰囲気をよく表現していた。当時のサンセイならではの硬派で洗練された作りだった。
「甘義経物語」や「甘忍術決戦月影」は美麗な映像とともに大好きなLUNA SEAやイエモンの曲を聴きながら打つ時間が至福だった(突確ばっかりで全然増えなかったけど)。
京楽:独自路線の雄
京楽も独自性の高い甘デジをたくさん出していた。
「歌舞伎ソード」はオリジナル版権で大ヒット。確変79%、平均連チャン5.3回という爆発力と、右近と景清のバトルを軸にした世界観、剣フラッシュ役物の迫力は多くのファンを熱狂させた。
「羽根ウルトラセブン」は羽根モノとデジパチの混合タイプという珍しい台で、球の動きが楽しい羽根モノの魅力に爆発力も兼ね備えていた。
「甘冬のソナタ」は韓流ブームを背景に驚異的な人気を博した。ミドル同様に甘めに使ってくれるホールが多く、たくさん勝たせてもらった。ちなみに私は大の韓流ドラマ・時代劇好きでドラマの冬ソナは10周以上完走している。
「甘必殺仕事人III祭バージョン」はシリーズ初の甘デジ。甘タイプでたくさん当たりを引けたおかげで、時代劇の仕事人シリーズをレンタルして観るくらい好きになった。
スロッターも納得の技術介入
「甘緋弾のアリア」「甘蒼天の拳」など、右打ち中の止め打ちで出玉を確実に増やせる台も多かった。
難しい手順ではなく、知っていれば得をするレベル。これが「遊技」している実感につながっていた。
パチンコ嫌いの妻も好きだった「回る」甘デジ
私の妻は、パチンコやパチスロ自体はあまり好きではなかった。しかし、当時の甘デジだけは好んで打っていた。
「エヴァ」や「アクエリオン」「沖海3」「信長の野望」といった甘デジ界の王道から、「華牌II」「村松誠コレクション」「ロミジュリ」といった個性派まで。「伝説の巫女」や「元祖!大江戸桜吹雪」「Rio」なんかも好んで打っていた。
私には良さが分からなかった「川島なお美 大奥」や「スペースインベーダー」にも、妻は夢中になっていた。
パチンコやパチスロが好きじゃないのに甘デジだけは打つ理由を聞くと、「回るから球が減るのが遅いし、たくさん当たるから楽しい」という単純なものだった。
これが普通の感覚だろう。最後は「甘マクロスF2」を楽しそうに打っていたが、回らなくなると同時にきっぱりと引退した。

ある「甘デジ専門店」の末路
かつて、妻と一緒によく通っていたホールがある。「全台4円甘デジ」という珍しい店で、古い台から新しい台、定番からマニアックなものまで、たくさんの台を甘めの調整で置いてくれていた。
夜は仕事終わりの客で満席、朝もパチンコしかないのに並びが出るほどの人気店だった。
しかし、その店はある時方針を変えた。 1パチコーナーを作り、ミドル&マックスタイプのパチンコやスロットを導入し、どこにでもある「普通の店」になったのだ。
結果、私たちを含め、常連客はすぐにいなくなり、数年後に店は潰れた。 ユーザーがこの店に求めていたのは低貸しや爆裂機ではなく、安心して遊べる甘デジだったということだ。
なぜ甘デジを打たなくなったのか

最後に腰を据えて打ったのは2022年末の乗物娘77ver.。結構面白かった。
答えは単純だ。回らなくなったから。
コロナ禍での客離れ、その後のインフレ、スマスロ・スマパチ導入コスト。ホールは釘を締めるしかなかった。さらに軍団による良台の独占が追い打ちをかける。
「1k 15回」以下の甘デジなんて、もはやパチンコではない。ただの集金装置だ。
過去を美化するつもりはないが、かつては「1k 25回」回る台は普通にあったし、探せば「30回」回るお宝台もあった。今では信じられない数字だが、それは確かに存在した「遊技」の姿だったのだ。
それでも釘を締めるのは悪手
ホールの事情も理解はできる。
ヘソを露骨に開ければライバル店から通報されるリスクがある。道釘や風車周り、入賞口で地味に回転数を稼ぐ調整には技術を持った人材と手間が必要だ。その技術を持つ人間がそもそもいない店も多いだろう。そして苦労して開けた台は朝一で軍団に押さえられる。
構造的に「回せない」状況にあることは理解している。だからこそ、これは簡単に解決できる問題ではない。
しかし、それでも釘を締めて目の前の利益を追求するのは悪手だ。
回らない台を打たされた客、特に初心者は二度と来ない。残るのは依存傾向の強い客だけ。それは商売として末期症状ではないだろうか。
パッと思いついた業界への提案は以下のようなものだ。
- 軍団対策の徹底:良台を軍団に独占させず、一般客に還元する仕組みを作ってほしい。せっかく回る台を置いても、朝一で軍団に押さえられては意味がない。
- 4円甘デジを新規の入口に:1パチへの誘導をやめて、回る4円甘デジを初心者に勧める発想の転換が必要だ。当たる楽しさ・勝つ楽しさを知った客はリピーターになる。
- たまには「回る台」を置いてほしい:釘調整の複雑な部分もあるので、ヘソだけでなく全体的な調整でボーダーをしっかり超えるような台を。朝一で「お、この台回るぞ!」と気づいた時のあの高揚感。銀河乙女で感じたあの無敵感。それこそがパチンコの醍醐味だったはずだ。
さいごに
私はスロッターだが、回る甘デジは今のジャグラー中心のノーマルタイプよりもはるかに面白いと思う。
1日打てば何十回も当たりを引ける。多彩な演出を楽しみ、魅力的な音楽に酔いしれ、技術介入で出玉を増やしたあの頃。
今の甘デジも台自体は面白いのかもしれない。でも釘が悪すぎて、打つという選択肢自体がない。それが本当にもったいない。
あの頃の「回る甘デジ」が戻ってきたら、私のような遊技者は必ず戻る。業界には、そのことに気づいてほしい。
正直に言えば、私の通うホールにも「回る甘デジ」はもう存在しない。だからこそ、この記事は処方箋ではなく、かつて甘デジを愛した一人の遊技者からの、ささやかな願いだ。



