オーバーロード、このすば、リゼロ、幼女戦記。『異世界かるてっと』を構成するメイン4作品はすべて視聴済みで、個人的に悠木碧さんの大ファンでもある。
そんな作品がサミーのBT(ボーナストリガー)機として登場すると知り、導入をずっと楽しみにしていた。導入日、抽選で無事に台を確保できた時は素直に嬉しかった。
結果から言うと、最終的に約1000枚のプラス。収支だけ見れば悪くない。しかし正直なところ、また打ちたいという気持ちにはなれない。
今回は、『すますろ異世界かるてっと』の実践データを基に、気になった数値を自分なりに検証・考察しつつ、なぜこの台が面白くないと感じたのかを心理学的な観点も交えて書いていく。
なお、解析がまだ出揃っていない部分も多いため、数値の考察はあくまで公開情報と1回の実践データからの推測であることを了承いただきたい。

設定2以上台の実践マイスロデータ
マイスロデータは以下の通り。

銅トロフィーが出現したため設定2以上は確定。いせかるぼーなす(黄7)中のキャラ紹介では銀と紫背景を確認したが、設定示唆の詳細はまだ解析待ちだ。
なお、マイスロデータ取得後に数ゲーム回したところボーナスに当選。そのまま打ち続けた結果、最終的には約1000枚のプラスで終了した。

設定推測:おそらく設定5?
いせかる目の確率は設定5とほぼ一致
通常時いせかるCHANCE突入50回、1/97.38。公表値と比較すると設定5の1/97.1にほぼぴったりだ。
| 設定 | いせかる目 | 実測値との差 |
|---|---|---|
| 設定1 | 1/107.6 | 乖離大 |
| 設定2 | 1/106.2 | 乖離大 |
| 設定5 | 1/97.1 | ほぼ一致 |
| 設定6 | 1/89.2 | やや乖離 |
ベルに隠された設定差?
通常時ベルの実測値は1/6.51。公表されている設定1の値は1/7.0だ。
通常時約5000Gでの期待回数は設定1なら約714回だが、実測は771回。この差はZ値2.18に相当し、設定1でここまで上振れする確率は約1.5%しかない。たった1回の実践ではあるが、ベルの出現率に設定差が存在する可能性は高いと感じた。
もしベルに設定差があるなら、最も出現頻度の高い小役だけにわずかな確率差でも累積すると機械割に大きく効く。公表値で設定1の数値しか出していないのも、ここに触れられたくないからではないかと推測している。
設定判別は「ベル」と「いせかる目」の2本柱か
この台の設定判別で1日の稼働内に信頼できる要素は、サンプルが大量に取れるベルと分母が約100で50回程度は引けるいせかる目の2つに絞られる。
ボーナス中のハズレ目は特大の設定差があるが(設定1:1/21845、設定6:1/512)、出れば設定1の可能性がかなり低くなるという片方向の武器でしかない。直撃ボーナスも設定差はあるが分母が1000以上と重く、1日のサンプルでは判別に使えない。スイカやチェリーの差も微差で誤差に埋もれる。
結局のところ、現在の公開情報では設定2と設定5を1日で見分けるのは難しく、実戦的には「設定1っぽいかそうじゃないか」「設定6は体感で分かる」くらいが限界だろう。
突BTの成功率は「50%オーバー」ではない?
公式サイトではBTのボーナス期待度を「50%オーバー」と謳っている。しかし、公開されている数値から逆算すると少し違った数字が見えてくる。
初当りが「いせかる目経由」と「ボーナス直撃」の2ルートのみと仮定すると、いせかる目からのボーナス獲得率を逆算できる。
| 設定 | 逆算した突BT成功率 |
|---|---|
| 設定1 | 46.4% |
| 設定2 | 46.3% |
| 設定5 | 46.0% |
| 設定6 | 45.6% |
全設定で約46%。私の実測値も23/50=46.00%で一致した。もちろんこれは「初当り」の定義が正しければの話だが整合性は高い。
もしこの推測が正しければ、通常時からの突BTは半分以上がスルーする計算になる。公式の「50%オーバー」はボーナス後BT(突BTよりも成功率が高い?)を含めた数字、あるいはマーケティング的に丸めた表現なのかもしれない。
この逆算からもう一つ気になることがある。BT中のボーナス獲得率が全設定でほぼ同じ46%ということは、BT中の抽選に設定差はほとんどない可能性が高い。
設定差は通常時のいせかる目出現率、直撃確率、そしておそらくベル確率に集中しており、BTに入ってしまえばどの設定でも同じ体験になるのではないかと考えている。
なぜこの台は面白くないのか
ノーマルタイプの文法を破壊した「出玉ゼロの当たり」
従来のノーマルタイプは当たれば必ず出玉がある。BIGなら200枚以上、REGでも100枚程度。当たりの重さに見合った見返りが保証されていて、だからこそ1ゲーム1ゲームに期待感が持てる。
この台の通常時は約1/100でいせかる目(突BT)が来るが、私の試算ではその54%が出玉ゼロで終わる。実質的な出玉獲得は初当り1/197.6(設定1)。
体感の当たりの半分以上がハズレというのは、ノーマルタイプではありえない体験だ。
プロスペクト理論で読み解く「むかつき」の正体
ノーベル経済学賞を受賞したカーネマンとトヴェルスキーのプロスペクト理論に「損失回避性」という概念がある。人間は同じ量の得と損を比べると、損の方を約2〜2.5倍強く感じるというものだ。
いせかる目が来た瞬間、脳は「当たった」と認識する。BT突入演出も入り、心理的に出玉は「自分のもの」になる。これが心理学でいう保有効果だ。そこからスルーによって奪われると、最初から持っていなかった場合よりはるかに大きな苦痛を感じる。
1日5000G回すと約50回の突BTが来て、そのうち約27回がスルー。1日に27回「当たったのに奪われる」体験をさせられる。従来のノーマルタイプでこの感覚はゼロだ。同じ収支でもストレスの総量が全く違う。
仮にこの台が「100枚+BT」がメインの構成だったらどうか。BTがスルーしても「まあREG分はもらえた」と納得できる。心理学的には参照点が変わるのだ。ゼロから奪われるのと、100枚もらった上での追加チャンス失敗では、同じスルーでも体験が180度異なる。
通常時の単調さ
通常時の当選構造も問題だ。メインの当選契機はベル(設定1で1/7.0)からのいせかる目だが、ベル時の当選率はわずか3.3%。頻繁に来る役は期待度が低く、期待できるチェリー(合算39.1%)は1/180程度と重すぎて全然来ない。
さらに演出と成立役がほぼ1対1で対応しており、ラフタリア出現=ほぼスイカのように、演出を見た瞬間に成立役が分かってしまう。スイカの当選率は9%なので「はいはい外れ」と分かってリールを止めることになる。
結局のところ、このゲーム性はAタイプの面白さではなく、CZ突破型スロットの劣化版だ。BTという新しい仕組みを使っているのに、実態は薄い確率のCZを当てて半分失敗する繰り返しでしかない。
BT中の演出:リプレイ=死亡との相性問題
BT中はリプレイの80%で転落という仕様だ。リプレイ確率は1/7.4なので、ほぼ7ゲームに1回は死の宣告が来る。
突BTで喜ぶ→1ゲーム目にリプレイで転落。これを何度か体験した。最初はむかつきもしたが、最後の方はもう「無」だった。心理学でいう学習性無力感、何をしても結果をコントロールできないと学習した結果、期待すること自体をやめてしまう現象だ。
不二子BTもリプレイで終了のピンチがあるが、あちらはリプレイでも転落しないことがそれなりにある。「もしかして耐えるかも」という希望が残る。異世界かるてっとはリプレイ=80%転落なので、リプレイの瞬間にほぼ結果が見えてしまう。

6ステージ+3カスタムを試した結果
BT中の演出は6種類のステージと3種類のカスタムから選べる。一通り試した感想は以下の通り。
- 体育祭ステージ:ベルで散々煽るが外れ、演出途中にリプレイで死亡。煽られた分だけ落差がキツい。
- ツインステージ:小役ナビに常にリプレイが見えるので恐怖が可視化される。
- 盾ステージ:告知が派手すぎてうるさい。
- パトゆんゆんステージ:一発告知なので可もなく不可もなく。
- クラシックステージ:当選時のみ告知。シンプルだが楽しさもない。
- 愛ステージ:演出発生=セーフ(小役orハズレ)の安心感がある。当選時はボーナスの色を指定した狙えカットインが出るので無駄がなく、速やかなボーナス察知にもつながる。
愛ステージのように色指定をしてくれない場合のボーナス察知手順も覚えておきたい。いろいろ試してみたが、右リール中段に黄7をビタ押しすれば、青7が成立していれば滑ってくる。どちらでもなければ次ゲームで赤7を狙い、それも揃わなければ黒BAR狙い。これで最速のボーナス察知が可能だ。
また、BT中に中押しや逆押しで楽しむ際は注意点がある。左リールの赤7付近にベルの配置がないため、中押し後に左リールで赤7付近を押すとベルを取りこぼす可能性がある。完全技術介入で機械割が多少上がる台なので、こうした小さな取りこぼしも意識しておきたい。
カスタムについても、先バレ・このすば・パネ振りの3種類を試したが、どれもリプレイ=80%死亡の構造と相性が悪い。
結局、ノーカスタム+愛ステージ一択という結論に至った。6ステージ3カスタムという豊富なバリエーションを売りにしているが、ゲーム性の構造上ほとんどが機能しない。選択肢の数は多くても、演出の多様性ではなく演出のハズレが多いだけだ。

シェイクBTとの比較:BTの正しい使い方
個人的に現時点でのBT機最高傑作はスマスロシェイクBTだと思っている。出玉設計には少し不満もあるが、最高の演出バランスと魅力的なBTの設計思想は頭抜けている。
シェイクBTはBIGを引くとまず最大194枚が確定する。その後BTに入り、継続JACを引き続ける限りループして出玉が伸びる。終了JACでも最大111枚もらえてBT終了。約300枚は保証され、平均獲得枚数は約400枚だ。
つまり「まず報酬を渡してから、追加チャンスを与える」という構造。194枚を得た時点で心理的な参照点がプラスに設定されるので、BTの結果がどうあれ損した気分にならない。
異世界かるてっとは逆だ。出玉ゼロの状態からBTという名のCZに放り込まれ、54%で何も得られずに戻される。BTという器だけ借りて、中身をゼロサムのギャンブルに変えてしまった。
総評:挑戦は認めるが、結果は失敗

異世界ガールズトークはかわいい。
「BTをCZのように使う」というアイデア自体は新しい。ボラを高めることで、のっぺりしがちなノーマルタイプに出玉のメリハリをつけたいという意図も理解はできる。挑戦としては評価すべきだろう。
ただ、誰もやらなかったのには理由がある。
ノーマルタイプの歴史の中で「当たっても出玉ゼロ」を避けてきたのは、開発者たちが打ち手の心理をそれなりに理解していたからだ。
プロスペクト理論や保有効果は近年の概念ではなく、先人たちは経験的にこの原則を知っていた。それを「新しい挑戦」として壊した結果がこれだ。
もし突BTをメインではなくアクセントとして使っていたら。もし最低100枚の出玉保証があった上でのBTだったら。この台は全く違う評価を得ていたかもしれない。
アニメファンとして、データ分析好きとして、この台には本当に期待していた。1000枚勝てたことには感謝するが、あの通常時の退屈さと、突BTスルーの虚無感は、正直もう一度味わいたいとは思えない。


