先日、知人がこんなことを言った。
「最近のパチスロは設定なんて関係ない。運だけやな」
そこそこ打ち込んでいる人の言葉で、適当に言ったわけではない。
そして、同じ趣旨のことを最近よく見かける。ネットの書き込みにもあるし、演者やホール関係者の発信にもある。
- パチスロの荒いAT機は設定より上乗せや連チャン。設定1でも連チャンさせられれば勝てる
- パチンコは回る台よりも連チャンする台のほうが大事
- 自分が回すくらいの回転数では収束しないのだから、回らない台でも低設定でも大差ない
私はこれを、間違っていると思っている。
ただ、頭ごなしに否定する気にはならない。この三つはどれも半分は正しいからだ。半分正しいものは、正しい部分だけを見せられると全部正しく見える。だから広まる。
「荒い」と「勝てない」は別のこと
ひとつだけ、言葉を決めておきたい。
この記事では「荒い」という言葉を何度も使う。勝ち負けの振れ幅が大きい、という意味だ。同じだけ勝てる台でも、毎日少しずつ勝たせる台と、めったに勝てないかわりに勝つときは大きい台がある。後者が荒い。分散やボラティリティと呼ばれるものも、指しているのは同じものだ。
そして荒さは、その台が勝てるかどうかとは別の話だ。 同じ期待値を、少しずつ渡してくるか、まとめて渡してくるか。それだけの違いでしかない。
この記事は、その二つが混ざっているところから始まる。
「設定は関係ない」が正しくなる場面は確かにある
その日の勝敗を決めているのは、ほぼ引きだ。 これは事実。荒い台では、一日の結果に設定が与える影響は引きに埋もれる。「設定6を掴んだのに負けた」も「設定1で万枚出た」も日常的に起きる。
荒い台を選ぶこと自体も間違いではない。 限られた時間と資金で大きな出玉を狙いたいという選択は、期待値がプラスであることを前提にすれば合理的でありうる。私は選ばないが、選ぶ人を否定する理由はない。
そして、設定不問で期待値を作れる領域は実在する。 天井やゾーンのように、仕様として公表されている区間を拾う打ち方だ。何ゲーム回せば何が起きるかがメーカーの公表情報として確定しているのだから、設定が分からなくても計算が成立する。
だから「設定は関係ない」が正しくなる場面は確かにある。
ただしそれは、仕様に書かれた区間を拾う場合の話だ。朝から低設定を回し続けることとは別物であり、この二つを同じ言葉で呼ぶと話がおかしくなる。以下で扱うのは後者のほうだ。
「させられれば」の主語は誰なのか
この文をもう一度ゆっくり読んでほしい。「させられれば」の主語は誰だろうか。
打ち手ではない。当たりを増やす手段も、連チャンを設計以上に伸ばす手段も、今の台には存在しない。つまりこれは、打ち手が操作できない変数を条件に置いた文だ。
操作できない変数を条件節に入れると、どんな主張でも真になる。
- 宝くじも当たれば儲かる
- 競馬も勝つ馬を買えば儲かる
- 設定1でも連チャンさせられれば勝てる
三つとも正しい。そして三つとも明日の行動を何ひとつ変えない。正しいが情報量がゼロなのだ。
にもかかわらず、この言い回しは技術の話に聞こえる。「させられる」という言葉が、本人の側に能力があるかのように響くからだ。
「引きが強い」も同じ構造をしている。引きとは本来、コントロールできないものにつけた名前のはずだ。ところが「強い」「良い」という形容詞がつくと、途端に本人が持っている属性のように見えてくる。鍛えられるもの、努力で手に入るもの、他人から学べるもの。
だが、事後にしか判定できず、次に同じ状況が来たときの予測に一切使えないものは、指標ではない。褒め言葉だ。
褒め言葉が技術用語の顔をして立ち回りの語彙に混ざり込むと、「自分にも調達できるもの」という錯覚が生まれる。私が「引きが全て」を危ないと思う最大の理由はここにある。
念のため書いておくと、当たりを操作する手段が本当に存在した時代はあった。
たとえば1.5号機のニューペガサスは乱数の仕組みが単純で、生成の順番を一人の天才に読み切られてしまった。目押しで押す位置を選べば、次にどの乱数を使うかを打ち手の側で決められたのだ。体感器も不正改造も使わない、知識と目押しだけの技術である。
そして、それは再現できた。手順が決まっていて、次に同じ状況が来れば同じ結果が出る。だから15年ものあいだ通用した。広めずに一人で実践していたから対策もされなかったのだ。終わったのも打法が効かなくなったからではない。2006年のみなし機撤去で台のほうが消えたからだ。
今「引きが強い」と呼ばれているものにはそれがない。再現できない方法は方法ではない。
1990年代。ニューペガサスの「永久連荘打法」を自力で開発した男がいた。唯一無二の攻略法で15年間勝ち続けた男を奥田渓竜がノンフィクションで描く。
「収束しない」は正しい。ただし、そこから出る結論は逆になる
「自分が回すくらいの回転数では収束しない」。これは正しい。
以前確率の収束について書いた記事で整理した通り、実測の確率は理論値に近づくが、負けた分の差そのものは返ってこない。
問題はそこから引き出される結論だ。
- 期待値の差は、回した数に比例して積み上がる
- 引きによる差は、回した数の平方根でしか広がらない
だから回せば回すほど、期待値の比重は上がっていく。収束しないというのは「一度開いた差は自然には埋まらない」という意味であって、「期待値が働かない」という意味ではない。短い期間でも、期待値はきちんと働いている。
マイジャグラー5の設定6を8000ゲーム打った場合、期待できる差枚は約2800枚、一日の揺れ(標準偏差)は約1550枚だ。たった一日でも、期待値は揺れの1.8倍ある。 一日単位の勝率が9割を超えるのも、この比から出てくる。
一日では収束しない、は正しい。一日では期待値が無力、は誤りだ。
「設定6でも勝率6割」が意味しているのは弱さではない

ここからが本題になる。
最近よく引き合いに出されるのが「設定6でも一日の勝率が6割程度しかない台がある」という話だ。実際にある。いま稼働の高いスマスロ機種の代表格、「スロット ソード・アート・オンライン2」がそれにあたる。
全国実績として、次の数字が出回っている(発信者が示した数値であり、私は原典を確認していない)。
| 設定 | 投入率 | 一日の勝率 | 出玉率(公表) | 出玉率(実績) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 71.20% | 35.69% | 97.6% | 96.82% |
| 2 | 21.28% | 36.47% | 98.8% | 98.09% |
| 3 | 1.58% | 40.35% | 100.2% | 99.50% |
| 4 | 3.22% | 45.71% | 105.3% | 103.55% |
| 5 | 1.27% | 54.11% | 110.4% | 106.32% |
| 6 | 1.44% | 60.54% | 114.9% | 111.23% |
※【YouTube動画】SAO2の設定狙いは危険?戦国乙女5と全国実績を比較|シャル@ツモらせ隊 より引用
設定6でも負ける日が4割ある。この数字が「だから設定は関係ない」の根拠として使われていた。
だが、これはまったく逆の意味を持っている。
以前パチンコの記事で、玉単価という数字について書いた(パチンコの構造は、そのために変わった)。玉単価はお金が減る速さを表す指標で、これを単独で見ると判断を誤る。玉単価が下がっても、店が取っている割合まで下がったとは限らないからだ。速さと割合は別の量なのだ。
勝率も、まったく同じ構造をしている。
勝率が測っているのは荒さであって、店が取っている割合ではない。二つ並べてみるとはっきりする。
| 実績の機械割 | 一日の勝率 | |
|---|---|---|
| SAO2 設定6 | 111.23% | 60.54% |
| マイジャグラー5 設定6 | 約111.6% | 約97% |

期待値はほぼ同じで、勝率だけが36ポイント違う。同じものを渡し方だけ変えて配っている。 ところが我々はこの違いを見て、「設定が効いていない」と読んでしまう。
勝率6割は台の弱さを表示しているのではない。荒さを表示しているだけだ。
ついでに書いておくと、荒い台が特別に多く取っているわけでもない。SAO2設定1の実績96.82%は、店が取る割合にすると3.2%。ジャグラーの設定1(97.0%)は3.0%だ。ほとんど変わらない。違うのは取る量ではなく取り方のほうだ。
そしてSAO2の設定6は、実績で111.23%出ている。取りこぼしも実際の打ち方も込みでこれなら、現行機種の中では相当に高い部類だ。危険なのは設定を狙うことではない。設定1と2で9割を超える配分の中に根拠なく座ることの方だ。
高設定を5倍に盛って計算し直してみた
先ほどの表には弱点がある。数字そのものは発信者が全国のデータから集計した実績値だが、私にその原典を確かめる手段がないことだ。配分が違えば結論も変わってしまうなら、この記事は成立しない。
そこで、報告された配分の高設定側を機械的に盛って計算し直してみた。
設定4以上の割合を2倍・3倍・5倍にして、減った分を設定1から3に振り分けている。比較のために、現実にはなかなか存在しない配分も二つ足した。設定別の勝率は上の表の値をそのまま使っている。
| 配分(設定1〜6の割合) | 全体の勝率 | 勝った日のうち設定6だったもの |
|---|---|---|
| 報告値 71.2 / 21.3 / 1.6 / 3.2 / 1.3 / 1.4 | 36.8% | 2.4% |
| 設定4以上を2倍 66.7 / 19.9 / 1.5 / 6.4 / 2.5 / 2.9 | 37.7% | 4.6% |
| 設定4以上を3倍 62.2 / 18.6 / 1.4 / 9.7 / 3.8 / 4.3 | 38.6% | 6.8% |
| 設定4以上を5倍 53.3 / 15.9 / 1.2 / 16.1 / 6.3 / 7.2 | 40.4% | 10.8% |
| (参考)設定1と6が半々 | 48.1% | 62.9% |
| (参考)全台が設定6 | 60.5% | 100% |
読み方が二つある。
一つ目。高設定を5倍に盛っても、座った日の勝率は4割にしか届かない。 設定6が半分入っているという店でも48.1%で、全台設定6にしてようやく5割を超える。
これは配分が悪いという話ではない。60.5%が、この機種の勝率の上限なのだ。 前の節に書いた通り、勝率が測っているのは荒さだからだ。配分をどう良くしても、これ以上にはならない。
二つ目。勝った日のうち設定6で起きたものは、現実的な範囲では1割に届かない。 報告値で2.4%、高設定を3倍に盛っても6.8%だ。
ここに、あの言説が消えない理由がある。
「設定1でも勝てた」という体験は、毎日大量に供給されている。 9割以上の勝ち日が設定6以外で起きているのだから当然だ。一方で「設定6を掴んで勝った」という体験はめったに発生しない。
体験の供給比が最初から偏っている。だから体感は必ずそちらに寄る。そして体感は、期待値について何も教えてくれない。
ただし、同じ体感が正しく働く場面もある。床の光景を見て店を判断するときがそれだ。
「設定は関係ない」と言われるSAO2に、設定差はいくつ仕込まれているか
ジャグラーならREG確率とブドウ確率を見ればほぼ足りる。判別要素が少なく、しかも一日で数千回という試行が積み上がる。
AT機は違う。SAO2について解析サイトが載せている設定差を並べるとこうなる。
| 要素 | 設定1 | 設定6 |
|---|---|---|
| CZ初当り | 1/238.4 | 1/191.7 |
| AT初当り | 1/386.2 | 1/269.6 |
| スイカからのチャージ突入率 | 40.2% | 55.1% |
| 強チェリーからのCZ突入率(低確) | 20.0% | 33.0% |
| 強チャンス目からの確定CZ抽選 | 0.4% | 5.1% |
| CZ失敗時のアイテム獲得率 | 20.3% | 30.1% |
| CZ失敗時のフリーズ発生率 | 1/128.0 | 1/64.0 |
| 特定モードからのAT直撃 | 1/18091.8 | 1/3415.7 |
※SAO2解析|一撃 より引用
これに加えて、AT終了画面やトロフィーといった設定示唆演出がある。
「設定は関係ない」と言われている台に、これだけの設定差が仕込まれている。 作り手が効く前提で設計したものを、打ち手が関係ないと言っている状態だ。
ただし、この表をそのまま使えるわけではない。
出所を確かめる手段がない
CZ初当り・AT初当り・出玉率は、メーカーが公表しているスペックだ。一方で表の下半分は、解析サイトに「自社調査」として載っている。
ただ、いまはROM解析が事実上行われていないので、この種の数値はメーカーから出たものと考えていい。精度が低いという話ではなく、正確だと確認する方法が打ち手の側にないということだ。
設定2から5が未判明のまま残っているのも、調べ足りないのではなく、どこまで明かすかをメーカーが決めているということでもある。
単独ではどれも足りない
一日8000ゲーム打った場合の判別力を計算してみる。Z値は二つの設定をどれだけ見分けやすいかを表す数字だ。
| 要素 | 設定1 | 設定6 | 判別力(Z値) |
|---|---|---|---|
| CZ回数 | 33.6回 | 41.7回 | 0.9 |
| AT回数 | 20.7回 | 29.7回 | 1.3 |
目安はこうなる。
- 2.0以上:はっきり区別できる
- 1.5以上:やや区別できる
- 1.0以上:参考程度
- 1.0未満:ほぼ見分けられない
一日打っても、単独で1.5を超える要素がない。
回数の少ない要素は、そもそもこの計算に乗らない。AT直撃は設定1で一日0.44回、設定6でも2.34回しか期待できない。一回引いた・引かなかったで設定を語ることは原理的にできない。
だから総合するしかない。回数を数え、示唆を拾い、重みを比べて、ようやく形になる。実際、この機種を打ち込んでいる人はそれをやっているはずだ。
判別できても、その日の勝敗は決まらない
そして、ここが「設定は関係ない」の正体だと思っている。
仮に判別が完璧にできたとしよう。設定6だと確信を持って一日打ち切ったとして、それでも負ける日が4割ある。逆に設定1だと分かっている台でも、3日に1日は勝てる。
判別の正しさと、その日の収支が結びついていない。
理由は、判別に使える場所と出玉が決まる場所がずれているからだ。判別に使えるのは回数の多い上流の要素で、統計として形になるには試行が要る。ところが出玉を大きく動かすのは、一日に数回、あるいは一回も起きない下流の出来事の方だ。
念のため書いておくが、これは下流に設定差がないという意味ではない。設定差はおそらくある。 ただ回数が少なすぎて、その日のデータからは読み取れないだけだ。同じことはジャグラーでも起きる。判別に使えるREGは出玉をあまり作らず、出玉を作るBIGは判別に使えない。
だから「高設定に座ったのに負けた」「低設定なのに勝った」が日常的に起きる。何度も起きれば、設定と結果に関係がないように見えてくる。
設定は効いている。効いていないのは、設定と今日の結果との結びつきの方だ。
パチンコの「引き次第」は、パチスロには持ち込めない
ここで、最初に挙げた主張のうちパチンコの話に触れておきたい。
「連チャンの中身は引きだ」という部分は、パチンコでは正しい。
店がいじれるのは釘だけで、釘が変えるのは投資の速さだ。大当り後の確変突入率も継続率も、機種のスペックとして固定されている。
設定付きの機種を除けば、同じ台に座った人は同じ確率で連チャンする。この主張が相対的にもっとも当てはまるのがパチンコなのだ。

ただし、そこから「だから回る台より連チャン」は出てこない。回転率は初当りの回数を決めるからだ。中身が引きだという話と台選びを捨てていいという話は、まったく繋がらない。
そしてパチスロはそもそも前提から違う。
| 投資の速さ | 連チャン・出玉の中身 | |
|---|---|---|
| パチンコ(設定なし) | 釘で動く | 固定。全員共通 |
| パチスロのAT機 | 設定で動く | 設定で動く |
ATがどれだけ伸びるか、上位ATに入りやすいかどうか。ここに設定差を付けることが、パチスロでは可能だし、実際に付いている台がある。SAO2も上位ATへ向かうバトルの対戦相手選択率に設定差があると指摘されている(解析サイトの指摘で、差の大きさまでは分かっていない)。
つまり「設定は関係ない、上位ATに入れられるかどうかだ」という主張は、パチンコの構造をそのままパチスロに持ち込んだものだ。そして持ち込み先がいちばん当てはまらない場所になっている。
同じ言葉が、パチンコでは半分正しく、パチスロでは根拠を失う。
荒い台は設定を軽視していい理由にはならない
もう一つ、逆向きに効く話をしておきたい。
荒い台ほど自分の立ち回りが正しかったかを確かめるのに必要な日数は伸びる。必要な日数は揺れの大きさと期待値の比の二乗に比例する。揺れが3倍なら9倍、5倍なら25倍の日数がかかる。
つまり荒い台では、間違った台選びをしても、その間違いが結果に表れてこない。
答え合わせが効かないゲームでは事後に軌道修正ができない。できないのだから、入口の根拠に頼るしかない。荒さは設定を軽視していい理由ではなく、軽視したときに気づけない理由なのだ。
そして「上位ATに入れられるかどうかが全てで、そこに設定差はない」という主張についても、一つ足しておく。
仮に上位ATへの移行率に設定差がまったくなかったとしても、そこに挑戦できる回数には43%の差がある。AT初当りが設定1で1/386.2、設定6で1/269.6なのだから当然だ。
設定は連チャンの対立概念ではない。連チャンの回数券だ。
誰も嘘をつく必要がない
「引きが全て」などの言説は、打ち手のあいだから自然に湧いたものではない。冒頭に書いた通り、演者やホール関係者の発信にも同じ趣旨のものが多い。
ただ、彼らが嘘をついていると書くのは的を外していると思う。むしろ正直に言っている。
動画を撮る人には、再生数や来店の報酬という、台の外から来る収入がある。その日の稼働そのものが収益になるなら、台選びの合理性は最初から要らない。回らない台だろうが設定1だろうが成立する。彼らの立場では、台の期待値を無視していいというのは本当のことだ。
問題は、その正しさが視聴者の持っていない収入源に支えられていることだ。画面に映るのは打ち方だけで、それを成立させている構造のほうは映らない。 だから真似できるのは片方だけになる。
ホールの側にも嘘をつく理由はない。同じ台の同じ確率が、店にとっては収束し、客にとっては収束しないからだ。
20台置いている店なら、客が10年かけて集める試行を店は50日で集める(週2ペースで年100日打つ人と、20台×50日は、どちらも1000台日にあたる)。一日単位では荒れるし低設定でも赤字の日はあるが、積み上がれば計算通りになる。しかもこの機種は稼働が取れているので、設定を入れて客を呼ぶ必要もない。
そして、ここが一番はっきりしている。設定が本当に関係ないなら、配分が偏る理由がない。 効かないものに、7割と1.4%という差をつける意味はどこにもない。
メーカーは八つ以上の設定差を作り込み、店は設定1を7割入れている。作る側も使う側も、設定が効く前提で動いている。 関係ないと言われているのは、打ち手が見ている側だけだ。
この言説が広まって困る人が供給側に一人もいない。 全員が自分の立場で正直にしゃべっているだけだ。だから訂正する人が現れず、この言説は自然には消えない。
この形は株の世界でも同じだった。証券会社・商材・配信で並べたことがある。
なぜ私が「引きが全て」に反対するのか
私はギャンブルが嫌いだ。競馬も競艇も一切やらない。運否天賦で金額が決まるものに、面白さを感じない。
それでもパチスロを打っているのは、これをギャンブルだと思っていないからだ。設定を選び、回数を重ねれば、結果は計算のほうに寄っていく。私にとってこれは、賭けではなく作業なのだ。
だから「設定は関係ない、引きが全て」という主張に反対している。あれは、この作業をギャンブルに戻す主張だからだ。 期待値は回数に比例し、引きは平方根でしか広がらない。この記事に書いたのは、そのための条件でもある。
ついでに書いておくと、私は今はジャグラーが中心でSAO2を打ったことがない。原作はWEB版のころから読んでいて今も小説を買い続けているが、それとこれとは別の話だ。
打たない理由も、ここまでに書いたことそのままだ。短いスパンでは設定が結果に表れにくい。 一人で、収支をできるだけ安定させたいなら、選択肢に入らない。
条件が揃えば話は変わる。設定状況の良い店で、複数人で高設定を確保して回せるなら、それはもう賭けではない。店にだけ収束が効くのは、店が台数を持っているからだ。束ねればサンプルは集まる。 ただ、それができる人は多くない。
だからこの記事は数字と構造の話に限っている。打ち込んでいる人の体感には及ばない。結論が自分の好みと一致していることも自覚している。
パチンコが先に通った道
最後に一つ、余談として書いておきたい。
パチンコでも同じことが言われるようになった時期がある。回るかどうかより連チャン、釘より引き、と。そしてその後に何が起きたかは以前の連載で書いた通りだ(「一瞬で球がなくなった」は正しかった)。回る台は減り、勝ち負けを見る客が抜け、そして戻らなかった。
これは予測ではない。起きたことだ。
ただ、この記事が言いたいのはそこではない。業界がどうなるかは私にも読者にも決められない。
決められるのは明日どの台に座るかだけだ。
釘や設定がどうでもいいわけではない。どうでもいいと思ってくれたほうが都合がいい人が、供給側に何人もいるというだけだ。
そして「設定は関係ない」を受け入れるかどうかは業界の決定ではない。打ち手の決定だ。
儲かれば実力、損をすれば運が悪かった。人間はそう思うようにできている。パチスロの本ではないが、この記事で一番言いたかったことは、ほとんどこの本に書かれている。
この記事の前提
本文に書ききれなかった、確かめる手段のない二点だけ挙げておく。
- SAO2の設定別データは、発信者が全国のデータから集計した実績値であり、推測値ではない。ただし私は原典を確認していない。導入から集計時点までの累計と思われるため、その期間全体の平均である点、データを送っている会員店舗の集計である点、設定の値が各店の入力に依存している点には注意が必要。
- 一日の勝率は、8000ゲーム打った場合の勝率ではなく、1台1日の差枚がプラスだった割合と思われる。稼働の少ない日が混ざるぶん、勝率は5割の方向へ寄っているはずだ。



