前々回は体感の話、前回は機械の話だった。今回は島の上の話をしたい。
「昔のパチンコは甘かった」とよく言われる。私はそう思っていない。
昔も、座れる台は探すものだった。違ったのは、探せば見つかったという一点だけだ。
その前に、二つ断っておきたいことがある。
一つ目。私は昔から店を選んで打っていた。ボッタ店には行かない。だからこれから出す数字は市場全体の姿ではない。すでに店選びというフィルタを通した後の話だ。当時も回らない店はいくらでもあったはずだが、私はそこに座っていないので何も知らない。
二つ目は、単位の話になる。
回転率を収支率に翻訳するにはボーダーが要る。だがボーダーは機種によって17〜22程度の幅があり、しかも非等価分を織り込んだ値だ。さらに前回見た通り、賞球数が変われば出玉の配分も変わるので、ボーダーそのものが時代とともに動いている。
回転数という、パチンコで唯一客が自分で数えられる量が、時代をまたいだ比較にはそのまま使えない。
だから以下では、ボーダー20を仮置きした収支率を参考値として括弧に入れ、ボーダーからの距離を主に使う。
まず、当時私が通っていた店の島がどうなっていたか。
| ボーダーからの距離 | 回転率 | (参考)収支率 | 島の中にどれくらいあったか |
|---|---|---|---|
| +10 | 30回 | 150% | イベント時など、月に数回 |
| +5 | 25回 | 125% | 店に数台 |
| +1〜+2 | 21〜22回 | 105〜110% | ちょこっと |
| マイナス | 20回未満 | — | 大半 |

これが、店選びというフィルタを通した後の分布だ。
店を選んだ上でなお、島の大半はマイナスだった。 プラスの台は数台しかなく、+10に至っては月に数回しか現れない。
つまり、昔のパチンコが甘かったわけではない。昔も、座れる台は探すものだった。
違ったのは、探せば見つかったという一点に尽きる。マイナスが並ぶ島の中に数台の+5があり、月に数回は+10が出た。そして期待値で打つ人間は、島の大半には座らない。右端に座る。
今はどうか。店を選ばずに座れば、1000円で15回転前後だろう。ボーダー−5、参考値にして75%になる。
では、店を選んだ上での右端は今どこにあるのか。
私はその数字を持っていない。データがないからではなく、私が探していないからだ。これについては節の最後に書く。
三つの実例
私はここ数年、パチンコの島を眺めることはあっても、打ちたいと思える台にはほとんど出会わない。ただ、ゼロではない。書いておきたい実例が三つある。
一つ目。 数年前まで、私はデータサイトで総回転数を投資額で割り、どれくらい回っている台があるかを調べることがあった。
ある日、沖海(スーパー海物語IN沖縄シリーズ)で30回転を超えている台を見つけた。急いで店に向かうと席はまだ空いていて、実際に回してみるとデータから逆算した数字よりもさらに回った。そのまま閉店まで打ったのだが、途中でデータ異常が出て、何度も止められながらの実践になった。少し前には、大工の源さんでも同じようなことがあった。

二つ目。 ある店がエヴァ15(パチンコ エヴァンゲリオン15)をおすすめ台として告知していた期間があった。実際に20回転を超えて回っていたので何回か打ったが、結果はトントンだった。

三つ目。 2025年12月、スロットコーナーからトイレへ向かって歩いている途中に、角のシンエヴァの甘デジが目に入った。どうせいつものクソ釘だろうと思って見たら、そうではなかった。二度見する程度には空いていた。座ってみると平均で23回転ほど回り、その日は5万円ほど勝った。半年ほど前の話だが、私がパチンコで勝った記憶は、それが最後になっている。

この三つから、私は三つのことを読み取っている。
右端はミスとしてしか出てこない
30回転超というのはボーダー+10だ。そんな台を店が意図して置くはずがない。実際、私が打っている最中にデータ異常として検出されている。
かつて「探せばあったお宝台」の水準が、今の営業ではシステムが異常と判定する水準になっている。ホールコンピュータの閾値が、そのまま「今の正常」を定義していると言ってもいい。
右端そのものは消えていない。だが、それが出てくるのは店の提供としてではなく、ほとんどがヒューマンエラーとしてだ。
これは私の解釈だと書こうとしたのだが、業界の側からも同じ言い方が出ている。業界ジャーナリストのPOKKA吉田氏は、ボーダーの甘いLT機が千円で30回転回ったら「事件」だ、絶対に釘がおかしい、と述べている。
私が打った台の回転数と同じ数字だ。
パチンコのデータランプには回転率が表示されない
三つの実例は、見つけ方がそれぞれ違う。
| 見つけ方 | 必要だったもの | |
|---|---|---|
| 沖海 | データサイトで総回転数÷投資額 | 外部ツールと計算 |
| エヴァ15 | 店の告知 | なし(ただし甘くない) |
| シンエヴァ | 通りすがりの釘読み | 30年分の目 |
無料で島全体を見渡せる経路が一つもない。
パチスロなら、島を歩けばデータランプにボーナス回数と総ゲーム数が出ている。判別に要る比の、分子と分母が両方表示されている。だから誰にでも読める。
パチンコにも数字は出ている。総回転数、大当り回数、初当り回数。だが回転率に必要なのは「何玉で回したか」で、それだけがどこにも出ない。大当り回数から出玉は概算できても、投資した玉の方が分からないからだ。
出ている数字が三つあって、そのどれも分母にならない。
だから、投資額や差玉をデータサイトで取りに行くことになる。一つ目の実例で私がやっていたのは、その補完だ。
もう一つの経路が釘読みだ。私も30年近くやっているので多少は読める。ただしそれは技能であって、訓練した人間にしか払えないコストだ。誰でも払える無料の経路とは違う。
そして三つ目に、無料の経路がないわけではない。
グループや店の無料アプリで、差玉を出しているものはある。そして未当選の台に限れば、これで回転率が読める。 差玉がそのまま投資玉になるからだ。500回転で差玉−5000玉なら25.0回転、−8333玉なら15.0回転。式は回転数×250÷差玉だ。
当りが挟まると、差玉から出玉を引かないと投資玉が出ない。そして引く数が決まらない。大当り中のアタッカーの拾いもばらつくし、何より電サポ中に持ち玉がどれだけ増減したかがどこにも出ない。初当り数回ぶんで、回転率にして3回転前後の幅が出る。ボーダーを跨ぐ幅だ。
だから私は昔から、ノーボーナスの台しか信用してこなかった。
読めるのは、その瞬間にたまたま当たっていない台だけになる。 これは島全体ではない。当たった台から順に、読める範囲から外れていく。
誰も座っていない
三つに共通しているのは、どれも席が空いていたことだ。
私は以前、せっかく回る台を置いても朝一で軍団に押さえられては意味がない、という趣旨のことを書いた。当時、回る台は取り合いだったのだ。それが今は、ボーダー+10の台が長時間空いている。
探す人間がいなくなれば、ミスすら回収されない。
そしてもう一つ。エヴァ15はトントンで、誰も気づいていなかった角台の方が甘かった。理屈としては当たり前で、告知すれば人は集まるので、店はそこをギリギリまで締められる。だが結果として、探して見つかるのは告知された方になる。打ち手の探索は構造的に甘くない方へ導かれることになる。
私はもう探していない
以上を踏まえて、私の結論はこうだ。
平均が下がったという話ではない。昔もほとんどの台はダメだった。ただ、探せばあった。今は、探して当たるものではなくなった。当たる時はたいてい誰かのミスに偶然行き当たった時だ。
そして、ここは正直に書いておかなければならない。
冒頭に書いたデータサイトを使った調べ物も、2年ほど前を最後にやめてしまった。パチンコはもうダメだと完全に思ってしまったからだ。
だから「打ちたい台は皆無に等しい」という私の感想には、私自身が探すのをやめたという事情が確実に混ざっている。
さきほど保留したのはそれだ。今の市場で店を選んだ上での右端がどこにあるのか、私は知らない。調べていないからだ。
これは弁解ではなく、むしろこの記事の主題そのものだと思っている。還元率に一番敏感な人間から順に探すのをやめていく。私はその一人にすぎない。
ちなみに供給側の数字も見ておきたい。ダイコク電機のDK-SISレポートによれば、4円パチンコの玉粗利は2024年10月から2025年9月までの12か月で、おおむね0.31円だ。
かつては10銭ちょいだった、という話が業界内で語られている。業界ジャーナリストのPOKKA吉田氏が、自分が業界に入った頃はそうだったと述べているものだ。後に同じ人が、SISの2006年の値として玉単価1.2円・玉粗利13.7銭・利益率11.4%という具体的な数字を挙げている。13.7銭が0.31円になったのなら2.3倍だ。
ただし、この数字にも断りが要る。SISのデータはダイコク電機のホールコンピュータを導入している店から集まるもので、そのホルコンは他社より高価なため、大手チェーンや繁盛店ほど導入率が高いとされている。つまり0.31円は優良店側の数字で、市場全体はもっと高い可能性がある。
この記事の冒頭に書いた私のフィルタと同じ向きだ。 私の観測も、業界で最もよく参照される統計も、どちらも良い方に偏っている。
そして、先ほど引いた同じ人が、私が保留したところにも答えを出している。全国平均が30銭を超えているのだから頑張っている店はこの世に存在しない、と。後に閾値も示している。4円島の玉粗利が年平均20銭を切っていれば頑張っていると言えるが、たぶんそんな店はない、というものだ。
平均の話から個別の店の話へ一段飛んでいるので、私はそのまま受け取ってはいない。ただし閾値が出たことで、この主張は反証可能な形になった。 年平均20銭を切る4円島が一つでも見つかれば、それで崩れる。
いずれにせよ、私は確かめていない。だから保留したままにしておく。
まとめ
- 店を選んだ上でなお、島の大半はマイナスだった。昔のパチンコが甘かったわけではない
- 違ったのは、探せば+5があり、月に数回は+10が出たという一点だ
- 今、右端はミスとしてしか出てこない。しかも誰も座っていない
- パチンコには、無料で島全体を見渡せる経路が一つもない
- そして私自身が、探すのをやめた一人だ
一言で言えば、探して当たるものではなくなった。 当たる時は、たいてい誰かのミスに偶然行き当たった時だ。
ここで素朴な疑問が出てくる。
+10の台が長時間空いているなら、それは店にとっても損のはずだ。誰かが気づいて座れば、その店の評判は上がる。なのに、そうならない。
誰も望んでいないように見える状態が、なぜ止まらないのか。 次回はその話を書きたい。
この記事は「探す」という営みについて書いた。その営みを長く続けている人の記録として、ガリぞう氏の漫画を挙げておく。ちなみに第六回で使うブドウ確率の推定値もこの人の調査による。
このシリーズ(全7回)
- 「一瞬で球がなくなった」は正しかった
- 構造は、そのために変わった
- 昔も、座れる台は探すものだった
- なぜ緩められないのか
- 私の基準は二つだけだった
- なぜジャグラーだけに還元が残るのか
- 中段の街が消えた
番外編.固定釘と設定付きパチンコ


