先に白状しておくと、私はジャグラーが特別好きというわけではない。
もし今、ジャグラー以外のノーマルタイプに同じくらいの還元率で高設定が入るなら、私は100%そちらを打つ。面白さより勝つことを優先しているだけで、それ以上の思い入れはない。
それでも私はジャグラーを打っている。理由は一つしかない。そこにしか還元がないからだ。
ここまで、還元率が下がり、それを見えなくするために分散が上がり、感度の高い客から順に抜けていったという話を書いてきた。今回から、では還元はどこに残るのかという話をしたい。
まず、自分が何を基準に選んできたのかを整理する。
私は30年近く、同じものを買っている
自分の履歴を並べてみる。ただし、一列では足りない。
| 時期 | ベース | 上に載せていたもの |
|---|---|---|
| 4号機時代 | ノーマルタイプ | 一部のストック機など |
| 2006年頃〜 | ノーマルタイプ | 4円の甘デジなど |
| 5号機期 | ノーマルタイプ | バジリスク絆など |
| 2020〜21年 | ノーマルタイプ | バジリスク絆2、コードギアスC.C.など |
| 2022年頃 | ノーマルタイプ | カバネリなど |
| 現在 | ジャグラー | なし |
私はカテゴリを渡り歩いてきたわけではなかった。ノーマルタイプは、4号機時代からずっとベースにある。 移動していたのは、その上に載せる台の方だ。
そして今、右下が空いている。
基準は三つに見えて、二つ
何を基準に選んできたのかというと、こうなる。
- 還元率が高いこと
- ボラティリティが高すぎないこと
- 設定判別が比較的容易なこと
このうち上の二つは、実は同じ一つの量に落ちる。勝率だ。
第一回に書いた計算がそれだった。1日の勝率は、期待差枚を標準偏差で割った値だけで決まる。還元率が高ければ分子が増え、ボラが高ければ分母が増える。二つは独立した基準ではなく、一つの数字に統合されている。
私は短期の勝ちを非常に重視している。だから最近の、設定6でも6割程度しか勝てないような台には絶対に座らない。軍団なら複数台で分散を均せるが、ソロにはそれがない。ボラの高さは、そのまま命取りになる。
実例を一つ挙げる。スマスロサンダーVの設定5は機械割104.1%、マイジャグラー5の設定4は104.2%。ほぼ同じだ。
だが1日の勝率は69.7%と74.5%。原因は分散の差で、サンダーVの標準偏差は1900枚台、マイジャグラーは1400〜1570枚台になる。大きく負ける確率も、荒い方が明確に高い。
同じ機械割でも、私が座るのは後者だ。基準にしているのが機械割ではないからだ。
だから基準は二つだ。勝率と、判別のしやすさ。

ただし、好みは別にある
正直に書いておくと、私にとってパチスロとはノーマルタイプのことだ。
リーチ目があり、スベリがあり、目押しがある。捨てゲームがなく、レバーを叩くたびに期待がある。それがパチスロだと思っている。老害的な考え方かもしれない。
ちなみにジャグラーは完全告知なので、この中のリーチ目がない。私が毎日打っているのは、自分の思うパチスロの条件を一つ欠いた台だということになる。
だから、上に書いた基準が私の好みと一致していることは事実だ。読む人はそこを割り引いてほしい。
ただ、好みと基準は別に検証できる。
それでも、カテゴリでは選んでいない
基準の方は、ノーマルタイプという枠を指してはいない。
その証拠がバジリスク絆2だ。AT機でありながらコイン単価が2.3円しかなく、ノーマルタイプに近い水準だった。基準を満たしていたので、カテゴリをまたいで打った。

5号機の絆は、その中では例外的にボラが高かった。それでも打っていたのは、設定6の機械割が高く、判別要素も豊富だったからだ。勝率という一つの量で見れば、基準の内側に収まっていた。
つまり私が買ってきたのは、ノーマルタイプという商品ではない。勝率と判別可能性という、二つの性質だ。そしてそれが今、ジャグラーにしか揃っていない。
判別のしやすさは、店の側では別の顔をしている
二つ目の基準、「判別のしやすさ」は、打ち手の都合の話に見える。だが店の側から見ると、まったく別の意味を持つ。
高設定というのは、ホールにとって広告宣伝費のようなものだ。見られない広告には意味がない。 前回書いた通り、パチスロでは設定を入れればデータランプに数字が出るので、抜いた後に戻すという運用が成立する。パチンコではそれができない。
| 高設定・良釘を入れたとき、客に伝わるか | |
|---|---|
| ジャグラー | データランプの数字で誰でも事後検証できる |
| 荒いAT機 | 出玉が分散に埋もれる。入れても伝わらない |
| 今のパチンコ | 前々回書いた通り、分母が表示されないので読めない |
つまり、客から見た「判別が容易か」と、店から見た「入れたことが伝わるか」は、同じ変数の裏表なのだ。
前回の最後に置いた問いは、たぶんここで答えが出る。 パチンコ機が1年で10万8千台減り、同じ年にパチスロ機が8千台増えた。片方は還元しても伝わらない媒体で、もう片方は伝わる媒体だった。
パチンコについては、店の側の事情もある。釘調整は建前上やってはいけないことになっているので、店は「この台は回します」と公然とは言えない。設定を入れるのは正規の営業なので、そちらは言える。業界ジャーナリストのPOKKA吉田氏が、ライターのイベントがパチスロに寄る理由としてこれを挙げていた。
客の側に検証手段がなく、店の側に告知手段がない。両側から塞がっている。
だから私の二つの基準は、偶然揃っていたわけではなかった。還元があるところと、判別できるところは、同じ場所になる。
そして荒い台に高設定が入らない理由も、これで二重になる。入れなくても客が来るから入れない、というだけではない。入れても広告にならないから入れないのだ。
アイムの設定5と6はREG確率が同じ
ここから先が、前回までに書いていないことになる。
見える、といっても程度がある。そしてジャグラーの場合、その程度は機種ごとに設計されている。
アイムジャグラーEXのREG確率は、設定5と設定6がどちらも1/255.0で、完全に同じだ。BIG確率も1/259.0と1/255.0でほとんど差がない。一方で機械割は、チェリー狙いで設定5が104.9%、設定6が107.0%になる(公表値では103.3%と105.5%。どちらで見ても差は2ポイント強だ)。
厳密には、BIGの側にわずかな差がある。だが8000ゲームで見ると、合算のボーナス回数の期待値は設定5が62.3回、設定6が62.8回。差は0.5回で、引きのばらつき(標準偏差7.9回)の16分の1でしかない。
データランプに出る数字は、事実上まったく変わらない。
一方で機械割の差は2ポイント強ある。8000ゲーム・投入24000枚なら約500枚、等価で約1万円だ。店は1台1日あたり1万円を節約しながら、客に見える表示は設定6と同一にできる。
これは第一回の話と同じ操作になる。あちらでは、控除率と標準偏差を同じ比率で動かせば勝率は変わらない、という計算を書いた。こちらでは、機械割を2ポイント強削っても無料で読める信号が動かない。削る対象が違うだけで、隠し方は同じだ。
つまり、こう言い直す必要がある。
還元は、還元したことを証明できる商品に残る。ただし証明できるのは「入れたこと」までで、「いくら入れたか」は証明できない。
そして店がその商品を選ぶ理由は、まさにそこにある。完全に見えなければ広告にならない。だが完全に見えてしまえば、設定6の効果を得るには設定6を買うしかなくなる。見え方が途中で飽和するから、5の値段で6の効果が買える。
入るのと、残るのは違う
一つ、断っておかないといけないことがある。
判別しにくい台に還元が入ることは、普通にある。
数年前ならヴァルヴレイブやからくりサーカス、少し前なら東京グール、今ならソードアート・オンラインⅡ。どれも荒い台で、上位ATに設定差があったりして展開次第では判別が難しい。勝率が高いとも言えない。それでも高設定は入る。

ただ、その入り方は上に書いたものと順序が逆だ。
店が設定を入れて客を呼ぶのではない。台の出玉力や演出や版権で先に稼働がつき、話題になった台に設定を入れないわけにはいかなくなる。 優良店の当たり前の判断だと思う。
同じ荒さでも、コイン単価が高いだけのビッグドリームやヤバチバのような台は、稼働貢献がすぐ終わる。差は台自体の魅力の方にある。

そして、この経路で入った還元は話題の寿命で終わる。
上に挙げた四つが、そのまま順番に看板を降りている。
| 稼働はどこから来るか | 何に縛られるか | |
|---|---|---|
| 追随 | 台の魅力(出玉力・演出・版権) | 話題の寿命 |
| 広告 | 設定が入るという評判 | 判別可能性 |
正直に書いておくと、追随の方が説明力は高い。 ビッグドリームが続かないことも、判別できるユニバ系に入らないことも、これで説明できてしまう。
だが一つ、追随では説明できないものがある。なぜジャグラーの稼働が続くのかだ。話題性も版権も出玉力もない。稼働の源が外から与えられていない。
ここは正直に書くしかない。私は決められない。
考えられる説明は少なくとも二つある。
一つは、ノーマルタイプというカテゴリに代替が存在しないことだ。AT機なら新台が次々に出て、より面白いもの、より稼働の良いものが来れば塗り替えられる。だがノーマルタイプに、今のジャグラーの代わりになる強力な機種はない。4号機の頃とは違う。
もう一つが、設定が入るという評判そのものが稼働を作っているという読みだ。
前者なら、話に判別可能性は要らない。カテゴリの独占だけで説明が付いてしまう。
代替がないなら、還元する理由もない
ただし、前者には足りないものが一つある。
代替がないなら、店は還元を入れなくてもいい。 他に行き場がないのだから、島を設定1で埋めても客は残るはずだ。逃げられない相手に還元する理由はない。
それなのに、ジャグラーには設定が入る。
つまり代替不在は、稼働を説明するが、還元を説明しない。 むしろ逆を予測する。
見えるということは、入れていないことも見えるということ
ここで、私が最初に書いた枠組みに足りなかったものが出てくる。
私は「入れたことが伝わるから広告になる」と書いた。だが判別できる商品では、入れていないことも同じように伝わる。
ジャグラーの島に設定が入っていない日は、データランプを見れば分かる。それが続けば、その店は目に見えるボッタ店になる。
前回、締めたことは分散に埋もれて伝わらない、と書いた。パチンコの釘ではそうなる。だがジャグラーでは埋もれない。 REGは勝手に表示されるからだ。
つまり判別可能性は、還元を広告にするだけではない。還元しないことを露見させる。
だから、逃げ場のない客に対しても、店は抜ききれなくなる。判別可能性は、還元の下限を作っている。
これなら代替不在とも両立する。カテゴリが独占されていても、抜いていることが見えるなら抜けない。
広告と固定費
そして、この下限は特定の島にだけ生じる。
海に客がいない店は、ボッタ店と言われる。ジャグラーに客がいない店も同じだ。どちらも、客の入りがそのまま還元状況の指標として読まれる。
読まれるのは、その島の需要が安定しているからだ。新台なら空いていても「不人気だから」で説明が付く。だが海やジャグラーが空いていたら、それは店のせいだと見なされる。
ただし、二つは同じではない。ジャグラーなら設定が入っているかどうかがデータランプの数字に直接出るが、海で読めるのは席の埋まり方だけだ。 還元の有無を一段隔てて映していることになる。この差は次回に効いてくる。
だとすれば、この二つの島の還元は広告費ではない。払わないと評判が落ちる、固定費の方だ。
還元には二種類あることになる。
| 何が決めるか | いつ止まるか | |
|---|---|---|
| 広告としての還元 | 店が選ぶ | 理由がなくなれば止まる |
| 固定費としての還元 | 止めると露見する | 露見しなくなるまで続く |
上に書いた話題の台は前者だ。店が選んで置いた広告なので、理由が消えれば終わる。ジャグラーは後者になる。
なぜジャグラーに客が来続けるのかは、決められなかった。だが、なぜ店がそこを抜ききれないのかは、これで説明が付く。
この記事で言えるのは、ここまでだ。
還元は、証明できない商品にも入る。ただし、残らない。
まとめ
- 私の基準は勝率と判別のしやすさの二つで、カテゴリではない
- 勝率は還元率とボラを一つにまとめた量だ。第一回の計算がそれにあたる
- 判別のしやすさは、店の側から見ると「入れたことが伝わるか」になる。同じ変数の裏表だ
- ただし証明できるのは「入れたこと」までで、「いくら入れたか」は証明できない
- 見え方が途中で飽和するから、設定5の値段で設定6の効果が買える
- 判別しにくい台にも還元は入る。ただしそれは台の話題性に追随したもので、話題の寿命で終わる
- ジャグラーの稼働がなぜ続くのかは決めていない。カテゴリの代替不在でも説明が付く。ただしそれは稼働を説明するだけで、還元を説明しない
- 判別できる商品では、入れていないことも見える。判別可能性は、還元の下限を作っている
- 還元には、店が選ぶ広告としてのものと、止めると露見する固定費としてのものがある。窓が閉じるのは前者だからだ
入るところと、残るところは違う。 残るのは、証明できる商品の方だけだ。
なお、この「伝わる」という条件をもっとも自然に満たしていた装置がドル箱だった。席の埋まり方よりも直接に、その日どれだけ出しているかを表示していた。それが消えたときに何が起きたかは、ドル箱が消えてパチンコが失ったものに書いた。
ここまでが枠組みになる。
だが、これだけでは足りない。判別できる商品が全部そうなっているわけではないからだ。次回、この枠組みを実際の機種に当てながら、なぜジャグラーだけがそうなのかを見ていきたい。
マクミラン著。「高設定は広告費だ」という言い方には、経済学で名前が付いている。シグナリングという。売り手が自分の品質を証明するためにコストを払う、という枠組みだ。数式なしで読める。
このシリーズ(全7回)
番外編.固定釘と設定付きパチンコ


