前回、還元には二種類あると書いた。店が選んで出す広告としてのものと、止めると露見するので抜ききれない固定費としてのものだ。そしてジャグラーの還元は後者だろう、というところまでが前回の話になる。
だとすれば、次の問いはこうなる。
なぜ、ジャグラーだけがそうなのか。
今回はその枠組みを実際の機種に当てながら、ほかの台がなぜ該当しないのかを見ていきたい。そして枠組みだけでは足りないことも、正直に書いておく。
窓は閉じる
私が移動してきた先を、時期と一緒に並べ直すと、あるパターンが見える。
| 時期 | そのとき市場で起きていたこと | |
|---|---|---|
| 絆2 | 2020〜21年 | 凱旋などの高射幸性5号機が撤去された直後 |
| カバネリ | 2022年 | 6.5号機。スマスロ本格化の直前 |
私が絆2を打ち始めた頃、自分のブログにこう書いていた。行きつけの店で凱旋などの高射幸性5号機が撤去されてから、そこそこ設定を入れ始めたので打つ機会が増えた、と。
荒い台という選択肢が市場から消えた期間に、マイルドな台へ設定が入り始めている。
そして、その期間の絆2は本当に良かった。設定6の機械割は112.9%あり、コイン単価は2.3円。ノーマルタイプの水準が2円前後で、アイムジャグラーが1.9円であることを考えると、AT機でありながらジャグラーの隣にいたことになる。AT機は3円前後が普通だ。
私は設定4以上の絆2に数十回座って、あまり負けた記憶がない。機械割は設定4で106.1%、設定5で110.1%、設定6で112.9%。マイジャグラーVの設定5〜6の台に数十回座ったのと同じことをしていた計算になる。引きが良かったのではなく、梯子の高さが違った。
同じ時期に打っていたコードギアスC.C.は、勝率が設定4で82.4%、設定6で95.9%あった。前回書いた基準が具体的にどれくらいの数字だったのかというと、これになる。今の荒い台とは桁が違う。



客は、最初は同じ台を嫌っていた
面白いのは導入時の評価だ。絆2は最初、空き台だらけだった。
2400枚しか取れない、通常時のベースが高くて、BCとかいうゴミみたいな出玉のボーナスしかなくて、つまらない。当時そう言われていた。
低分散、高ベース、小さい払い出し。私がこのシリーズで良い性質として書いてきたものが、そのまま欠点として並べられている。
そして設定が入り始めた途端、同じ台に人が集まった。スペックは1ミリも変わっていない。
だから「客が荒い台を好んだから荒くなった」という説明は、少なくとも一本道ではない。同じスペックへの評価が、還元の量だけを理由に反転している。
そして閉じた
この均衡は続かなかった。スマスロが本格化して荒い台が戻ってくると、マイルドな台への設定投入は細っていった。
絆2もカバネリも、窓だった。荒い台の供給が途切れた谷間に開き、新しい荒い台が来ると閉じる。
前回書いた話題性による還元も、閉じるという点では同じだ。ただし開く理由も閉じる理由も違う。
| 前回の呼び方 | 開く理由 | 閉じる理由 | |
|---|---|---|---|
| 絆2・カバネリ | 広告 | 荒い台の供給が止まる | 荒い台が戻る |
| SAO2など | 追随 | 台の魅力で稼働がつく | 話題の寿命 |
共通しているのは、店の側の事情で開いて、店の側の事情で閉じることだ。 どちらも店が選んで出している還元なので、選ぶ理由が消えれば終わる。
そう考えると、ジャグラーだけが特別なのは低ボラだからではない。窓が閉じないからだ。移行期に依存せず、いつでも成立している。
もっとも、なぜ閉じるのかまでは私には確定できない。前々回書いた「台価格÷設置期間」の重さが関係している気はするが、絆2の台価格と実際の設置期間のデータを持っていないので、ここは推測にとどめる。
判別できても、還元が入らない場所がある
前回たどり着いた答えは、止めると露見するから抜ききれない、というものだった。
だが、ジャグラーに設定が入る理由として業界で挙がるものは、ほかにもある。並べてみる。
- 看板だから
- 老若男女問わず打てるから
- 初心者の入口だから
- ノーマルタイプの高設定は平均稼働数を押し上げるから
私が4号機時代にジャグラーを打ち始めたとき、当時の店長に「ここから育っていってもらいたい」と言われたことがある。入口としての位置づけは業界側にも確かにある。
海が示していること、示していないこと

上の三つには、海物語という例がある。看板で、老若男女が打っていて、入口でもあった。それでも海は崩れた。
ただ、ここは慎重に書かなければならない。前々回書いた通り、私の体感ではコロナ明けに海の島の年寄りが戻らなかった。客が物理的に消えた島で、その後に店が釘を締めたという順序だ。 だとすれば、海が崩れたことは看板性や入口性を否定する材料にならない。稼働が消えた島から還元を引き上げるのは、当たり前の反応だからだ。
だから海から言えることは、限られる。
海の構造は、ほとんど変わっていない。 大海物語5をはじめ、今も3個返しの機種は多い。通常か確変か、大当りの出玉は基本的に同じという分かりやすさも変わっていない。構造は変わらず、還元だけが落ちた。
これは第二回に書いた「還元率が先で、構造は後だ」の、パチンコ側からの証拠になる。だが「なぜジャグラーには還元が残るのか」の答えにはならない。
海の還元は、なぜ固定費でなくなったのか
一つだけ、書いておきたいことがある。
前回、還元には店が選ぶ広告としてのものと、止めると露見する固定費としてのものがある、と書いた。だとすると疑問が出る。海の還元は、かつて固定費だったはずだ。 海の島に客がいない店はボッタ店だと見なされたのだから、店は締めきれなかったはずである。
だが海は釘の台で、還元されているかどうかを客が直接読むことはできない。判別できない商品が、固定費として扱われていたことになる。
答えは、その固定費にも強さの差があるということだと思う。
ジャグラーでは、設定が入っているかどうかがデータランプの数字に出る。海で見えるのは客の入りだけで、それは還元の有無を一段隔てて映しているにすぎない。
だから客が減って、空いているのが普通になれば、その一段が切れる。露見しなくなれば、固定費は固定費でなくなる。
ここは正確に書いておきたい。「客が減ったから引き上げた」という説明と、これは競合していない。同じ時点から始まっている。
違うのは、後者が前者を必要としないことだ。判別できない商品の固定費は、もともと客の入りという一段に乗っている。 その一段は、客が減れば外れる。だが減らなくても、何かの理由で席の埋まり方が読めなくなれば同じことになる。
コロナはその一段を外しただけで、外れる可能性は最初からあった。
そして固定費の強さが信号の直接性で決まるなら、これも判別可能性の話の一部になる。海の場合、還元と信号のあいだに客の入りという一段が挟まっていた。
だから、パチスロの中で比べる
もっと素直な比較がある。パチスロのノーマルタイプの中で見ればいい。市場も規制も、還元の媒体も同じだ。
現在、ジャグラー以外のノーマルタイプは、スマスロハナビ、スマスロサンダーV、スマスロアレックスなど、ユニバ系がほとんどになっている。そして、ノーマルタイプに力を入れている店以外では、ほぼ設定1か2の運用だろう。私がなかなか打つ機会がないのはそのためだ。
ここで、最初は「判別できるのに還元が入らない例だ」と書こうとした。だが、調べてみるとそうではなかった。
公表されていることと、読めることは別だ
これらの機種にも、設定差のある小役は公表されている。問題はその使い方だ。
サンダーVには、ジャグラーのREGに相当するエースがいない。以前このブログで計算したところでは、判別に使える6つの要素はどれも単独では参考程度で、全部を正しい重みで合成して初めて統計的に有意になる。 一つだけ見ている人と全部合成している人では、判別力が倍以上違う。ハナビも要素が10個あり、しかも比率ではなく独立に合成しないと精度が落ちる。
ジャグラーなら「REGとブドウだけ見ろ」で済む。ユニバ系はツールがないと戦えない。
つまり判別可能性は、あるかないかの二値ではなかった。誰が、どれだけのコストで読めるかという程度の話だ。
前々回、パチンコの良釘は読めるが技能が要る、と書いた。同じ構造がパチスロの中にもある。情報が公表されていることと、打ち手がそれを判断に使えることは、別のことだ。
そしてもう一つ、設定の側にも事情がある。設定6の機械割を高くすれば設定5との差が目立って判別が容易になり、設定5を上げれば今度は設定2との差が明白になる。判別されにくくしようとすると、設定6の機械割を抑えるしかなくなる。
前回、アイムでは設定5と6のREG確率が同じだと書いた。あれと同じ操作を、こちらは機械割の側でやっていることになる。判別されないように差を詰めた結果、高設定の魅力そのものが薄くなった。
別の説明もある。ユニバ系は技術介入で設定1でも機械割が上がるので、店から見れば高設定を入れる余地が最初から狭い。どちらが効いているかは決められない。


だから、これは反例にならない
読みにくい商品に還元が入っていない、というだけの話だ。必要条件の側には、むしろ沿っている。
では逆はどうか。判別できれば還元が入る、と言えるだろうか。
言えない。私はその証拠を持っていない。
ジャグラーには還元がある。だがそれは一例だ。判別が容易な商品を集めてきて、そこに還元が入っている割合を数える、という作業を私はしていない。
だから、この記事の主張は必要条件の形でしか書けない。
判別できない商品には、還元が残らない。
前回書いた通り、入ることはある。だが残らない。対偶を取ると「還元が残っている商品は、判別できる」になる。ジャグラーはそちらに入っている。だが「判別できるから残る」とは言えない。
そして必要条件の形なら、海も、今のパチンコも、荒いAT機も、ユニバ系も、全部同じ一文で説明できる。
もう一つ、稼働への貢献がある
残るもう一つの理由は稼働だ。ノーマルタイプの高設定が平均稼働を押し上げるというのは、業界でよく言われる。
これは計算で確かめられる。コイン単価は売上をイン枚数で割った値で、平たく言えば1枚打つのにいくら現金を通すかを表す。
| コイン単価 | 8000ゲーム・3枚での投資額 | |
|---|---|---|
| アイムジャグラー | 1.9円 | 約4.6万円 |
| ビッグドリーム | 5.7円 | 約13.7万円 |
同じ客の同じ財布で、ジャグラーなら3倍の時間座れる。 稼働は延べ時間なので、コイン単価が低いほど有利になる。
これも十分条件ではない。海の玉単価も低かった。
だが、必要条件の議論に対して、この節は一つ足している。判別可能性は還元が残る条件で、コイン単価の低さは還元が入る条件だ。
前者がなければ残らない。だが前者だけでは、店に入れる動機がない。ジャグラーは両方持っている。
判別力は本物で、しかも確信には届かない
ジャグラーの設定判別は幻ではない。以下はマイジャグラーでの計算になる。
このブログで以前計算したところでは、REG確率の尤度比は3000ゲームで5.95になる。設定6が設定1の水準以下に見える確率は、8000ゲームで0.2%しかない。判別力そのものは本物だ。
ただし、限界もはっきりしている。
| 条件 | 設定5か6である確率 |
|---|---|
| 打つ前(イベント日の設定配分から) | 20.0% |
| REGが1日ずっと設定6ペース | 60.9% |
| さらにブドウも正確にカウント | 67.5% |
1日ぴったり設定6ペースを引いても、3回に1回は設定5・6ではない。
この「本物だが確信には届かない」という水準が、絶妙なのだと思う。読めるから判別する層が来る。確信に届かないから外し続ける。
そして表の見出しに注意してほしい。「設定6である確率」ではなく「設定5か6である確率」だ。 前回書いた通り、アイムでは設定5と6のREG確率が同一なので、無料の信号で両者を分けることは原理的にできない。上の計算はマイジャグラーのものなのでREGで5と6は分かれるが、それでも実践の単位は「5か6」でまとめて数えることになっている。
そして店の利益は、ちょうどその境目に置かれている。
ブドウを1356回数えても、REGには勝てない
もう一つ、ジャグラーには面白い性質がある。
8000ゲーム打つと、ブドウはおよそ1356回落ちる。打ち手はそれを自分の手でカウントする。ものすごい作業量だ。
だが証拠としての力は、8000ゲーム分のブドウで尤度比4.18。3000ゲーム分のREG(5.95)にすら届かない。
REGはデータランプに勝手に表示される。何もしなくていい。少ないゲーム数で、何の作業もせずに、より強い。三重に負けている。
つまりジャグラーでは、確信を作っているのは情報量ではなく労働量ということになる。1356回数えた日は、結果がどうであれ「ちゃんと打った日」になる。
このブログで前から書いてきた話に接続すると、こうなる。
| 要素 | 供給しているもの | 払うコスト |
|---|---|---|
| BIG | 感情(払い出し) | なし |
| ブドウ | 確信 | 労働(1356回数える) |
| REG | 判断 | なし(表示される) |
| (パチンコの釘) | 判断 | 技能 |
判断を供給する要素だけが、感情も労働も伴わない。
そして表の最後の行が、前々回書いたパチンコの話になる。釘は読める。私も30年近くやっているので多少は読める。だがそれは労働ではなく技能だ。時間をかけても、読めない人は読めない。 誰でも払えるコストと、払える人が限られるコストは違う。パチンコの判別可能性は、後者の上に乗っている。

まとめ

- 絆2もカバネリも「窓」だった。荒い台の供給が途切れた谷間に開き、新しい荒い台が来ると閉じる
- 客は最初、同じ台を嫌っていた。スペックは1ミリも変わっていないのに、評価だけが反転している
- 海が崩れたことは、客が先に消えた島の話なので、看板性や入口性を否定する材料にはならない
- 海の還元はかつて固定費だったが、客の入りという間接的な信号に乗っていた。だから客が減ると外れた。固定費としての強さは信号の直接性で決まる
- ユニバ系ノーマルは、要素が公表されていてもツールなしでは読みにくい。判別可能性は二値ではなく、読むコストの問題だ
- 話題性で稼働がついた荒い台には還元が入るが、話題の寿命で終わる。残るかどうかが分かれ目になる
- 判別可能性は還元が「残る」条件で、コイン単価の低さは還元が「入る」条件だ。ジャグラーは両方持っている
- 「判別できれば還元が入る」という証拠は持っていない。だからこれは必要条件にとどまる
- ジャグラーの判別力は本物だが確信には届かない。そして確信を作っているのは情報量ではなく労働量だ
- 二種類の窓(広告と追随)は、どちらも店の事情で開いて店の事情で閉じる
だから、この主張は必要条件の形でしか書けない。
判別できない商品には、還元が残らない。
逆は成り立たない。判別できる商品に、必ず還元が入るわけではない。だが、判別できない商品に還元は残らない。
業界への含意があるとすれば、「還元を増やせ」ではなく「還元が見える商品に置け」ということだと思う。ホールの多くが甘デジを育てたいと答えながら動けない理由も、たぶんここにある。甘デジに釘を開けても、開けたことが伝わらないからだ。
そして打ち手にとっては、判別できない台で還元を期待してはいけない、ということになる。還元があったとしても、それを確認する手段がないからだ。そして店の側にも、確認されない還元を続ける理由はない。
もしジャグラーの判別可能性が下がる日が来たら、還元も一緒に消えると私は思っている。
この予測を直接支える例は持っていない。だが逆向きの例ならいくつかある。読めるようになった台に何が起きたか、という形だ。
スマスロ北斗の冷遇モードは、ある程度の塊が出た後に出玉が出にくくなるもので、打ち手にとって不利な向きだった。稼働に陰りが見え始めたのは、それが明らかになってからだ。
一方、ヴァルヴレイブのミミズモードは、打ち手の間では試験対策と理解されていた。発覚したことで「ミミズでなければ設定6は公称をはるかに上回る」と分かった。こちらは稼働を上げた側面がある。
共通しているのは、発覚したこと自体ではない。発覚した中身の向きに稼働が従ったことだ。
読めるようになれば、打ち手は読んだ通りに動く。私の予測は「読めなくなれば還元が消える」で、向きは逆だが、見ているものは同じだと思っている。
ただし、どちらも順序は観測できるだけで因果は示せない。北斗の低下はどの台も一年経てば落ちるという事実と区別できない。ヴァルヴレイブの上昇も他の要因と分離できていない。
ただ、答えていない問いが一つ残っている。
私は還元のある場所へ移動してきた。だが、一度も荒い台へは移らなかった。 業界は「ジャグラーから育っていってもらいたい」と考えているのに、そうならない。
なぜ移らないのか。次回、最終回でその話を書きたい。
ネイト・シルバー著。この記事の尤度比とベイズ推定を、もっと広い題材で追いたい人向け。引きのブレの中から設定を読むのと、同じことをやっている。
このシリーズ(全7回)
- 「一瞬で球がなくなった」は正しかった
- 構造は、そのために変わった
- 昔も、座れる台は探すものだった
- なぜ緩められないのか
- 私の基準は二つだけだった
- なぜジャグラーだけに還元が残るのか
- 中段の街が消えた
番外編.固定釘と設定付きパチンコ


