その日は並びで設定4以上が入るイベント日だった。
なんとか『ゴーゴージャグラー3』の狙い台に座れたが、待っていたのは1600GでBIG1回・REG15回という、とんでもない偏りだった。
ペカってもペカってもREGばかり。当然出玉は全く伸びない。「いつかは収束するやろ…」と呟きながら回し続けた結果、最終的に8253GでBIG30回・REG43回・差枚+1000枚。
朝の状況を考慮すれば上出来ではあるが、実践中ずっと頭に浮かんでいたのは「ジャグラーって、本当に完全確率か?」だった。
この偏りを前にして完全確率を疑いたくもなった私が、さんざん調べて何にたどり着いたか。先に言ってしまえば、嘘とも本当とも結論が出ない、というところだ。それでも、その「分からない」に至るまでの考えを書いておきたい。
実践データの整理
まず実践データの数字を並べる。
| 項目 | 実測値 | 設定5理論値 | 設定6理論値 |
|---|---|---|---|
| 総ゲーム数 | 8253G | – | – |
| BIG | 30回(1/275.1) | 1/247.3 | 1/234.9 |
| REG | 43回(1/191.9) | 1/247.3 | 1/234.9 |
| 合算 | 73回(1/113.1) | 1/123.7 | 1/117.4 |
| ブドウ | 1318回(1/6.26) | 1/6.00 | 1/5.92 |
| 差枚 | 約+1000枚 | – | – |
※ブドウ確率は、けんのスロットシミュレーション(ゴーゴージャグラー3)より
合算とREGだけ見れば設定6相当。
ところがブドウは1/6.26、設定1の理論値1/6.25よりわずかに悪い水準だ。総合的に設定推測するなら設定4or5が妥当といったところだろう。

BIG1回REG15回はどれくらい異常な偏りなのか

次に、ゴージャグの1600G時点でのBIG・REGの期待回数を実測と並べてみる。
| 設定1の期待 | 設定6の期待 | 実測 | |
|---|---|---|---|
| BIG | 約6.2回 | 約6.8回 | 1回 |
| REG | 約4.5回 | 約6.8回 | 15回 |
BIGが1回というのは、設定6でも1%弱、設定1でも1.5%程度の下振れ。珍しいが、まあ起こりうる範囲だ。
問題はREGだ。期待が6〜7回のところに15回。これは設定6でも0.5%前後、設定1なら2万分の1以下という、かなりの上振れになる。
このBIG下振れとREG上振れが「同時に」起きる確率を掛け合わせると、設定6でもおよそ2万分の1。設定1だと事実上ありえない数字になる。
ここで、短絡的に考えればこうなる。「2万分の1?偶然なわけがない。完全確率は嘘」と。
実際、ネットにはこの手の主張が溢れている。「北電子は乱数を操作する特許を持っている」「ハマったらジャグ連、ある程度出たら冷遇」「モードで制御されている」など。
確かに思い当たる節は多い。特許という”物証”まで添えられているのも説得力を感じる。
だが、ここで思考停止するのは違う。順を追って冷静に考えていきたい。
一台の偏りは完全確率の反証になるか

最初に、一番大事なことを書く。
私が引いたBIG1・REG15という偏りは、完全確率を否定する証拠にはならない。
完全確率というのは「毎ゲーム同じ確率で抽選される」という意味であって、「結果が綺麗に均される」という意味ではない。むしろ完全確率は、偏りが起きることを前提にしている。
全国で何十万人が毎日ジャグラーを打っている。その母数の中で「2万分の1の偏り」を誰かが引くのは、むしろ当たり前だ。今日はたまたま私がその「誰か」だっただけ。
これは以前2000枚の壁の記事で書いた「平均への回帰」と裏表の話だ。異常な上振れも異常な下振れも、確率の鉄則として必ず一定数発生する。
後から自分の異常なデータだけを切り取って「これは偶然か?」と問うのは、宝くじの当選者を指さして「この人が当たる確率は1000万分の1だから不正だ」と言うのに等しい。当たった人を後から選んでいる時点で議論として成り立っていない。
だから私のこの一台は、ここでは「証拠」としては一切使わない。あくまで、「我々は結局この台の中身を知り得るのか」を考えるための入り口として使うだけだ。
北電子の「特許乱数幅変更機能付き遊技機」とは?
完全確率否定論の最大の拠り所が北電子の特許だ。「乱数幅変更機能付き遊技機」という名前で、2003年に出願されている。
「特許がある=やってるに決まってる」で片付ける人が多いが、せっかくなので中身を噛み砕いておく。これを知らずに「特許が証拠だ」と言っている人が、あまりにも多いからだ。
まず、普通の抽選の仕組みから。
パチスロは内部で、たとえば「1から16384まで」の数字(乱数)をものすごい速さで回し続けている。レバーを叩いた瞬間にその数字を一つ抜き取る。そして「1〜55ならボーナス」「56〜1055なら小役」「1056〜16384ならハズレ」というように、数字の範囲ごとに当たり外れが割り振られた表(抽選テーブル)と照合する。これが抽選の正体だ。
当選確率を変えたければ、普通はこの表を何種類も用意する。設定1用の表、設定6用の表、という具合に。表ごとにボーナスの範囲を広げたり狭めたりして確率を変える。
ところが、この特許のアイデアは違う。表は1種類のまま、回している数字の”上限”だけを動かすというものだ。
たとえば上限を16384から15235に下げる。すると何が起きるか。この特許では、ハズレを数字の上限側に置いている。だから上限を下げると、削られるのはハズレの範囲だ。ボーナスや小役の範囲はそのまま、母数(全体の数字の数)だけが減る。
結果として、ボーナスの当選確率が上がる。逆に上限を上げてその分をハズレにすれば、当たりにくくなる。

特許には「ハズレが減った!と分かれば遊技者は嬉しいだろう」という趣旨のことまで書かれている。正直、ここは建前くさい。打ち手は乱数の上限値なんて見えないのだから。
そして気になるのが、どういう時に上限を動かすかだ。
特許には三つ書いてある。一定ゲーム数ごとに動かす。特定のフラグが立ったら動かす。そして三つ目が、実際の出玉率が予定とズレたら、自動で動かして補正するというものだ。
この三つ目を読むと、確かにゾッとする。「出すぎた台は当たりにくく、出てない台は当たりやすく、機械が自分で勝手に調整する」という発想が、20年以上前の特許にはっきり書かれているのだから。「やっぱり操作する気じゃないか」と言いたくなるのは、よく分かる。
ただし、ここからが冷静になるべきところだ。
この特許は2003年、4号機末期の出願だ。当時はストック機や連チャン機が現役で、営業中に実効確率が動く台が普通に存在した時代だった。「出率を見て自動補正」という発想は、まさにその時代の空気の産物だろう。
そして今は、設定変更は朝一の電源投入時しかできない、というのが規則の大原則になっている。営業中に台が勝手に確率を変える、という機能は、現行のルールでは原則アウトだ。この特許に書かれた機能の多くは、そのままの形では今の台に積めない。
もっとも、営業中に台の出方を勝手にいじる行為は、当時から規則上は問題のある行為だった。ただ、その運用がとにかくザルだったのだ。
私は4号機の頃から打っているが、私の通っていた店などは「BIG〇回を一番早く当てた客の台を設定6に上げる」なんてことを平気でやっていた。今思えば際どいどころの話ではないが、当時はそれくらい何でもありの空気だった。
ただし、それはあくまで店が手で設定をいじる話。この特許がやろうとしているのは、その一歩先だ。
台が自分自身で出率を見て確率を動かす、という発想である。人の手で平気でそんなことをやっていた時代に、それを機械に自動でやらせる特許まで出ていた。当時の自由度の高さには妙に納得させられる。
そして、もうひとつ重要なことがある。この特許、そもそも認められていない。
特許庁の手続きの記録をたどると、この出願は2003年に提出された後、2008年と2009年の二度にわたって拒絶理由通知を受け、出願人が補正で反論したものの覆らず、2010年2月に拒絶査定が下されている。
つまり、特許として成立していない。審判で争った形跡もなく、そのまま終わっている。
念のため補足すると、拒絶されたからといって「技術として価値がない」わけではない。拒絶の理由は多くの場合、既存の発想に近い(新規性や進歩性が足りない)といったもので、アイデアの良し悪しとは別の話だ。だが、いずれにせよ事実として、これは特許庁に独占を認められた発明ではない。
完全確率を否定する人たちが「物証」として持ち出すこの特許は、出願はされたものの、審査を通らなかった。実装どころか特許としてすら認められていない紙なのだ。
整理すると、こうだ。あの特許が証明しているのは「北電子がこういう発想を持っていた」ことだけ。「今のジャグラーにそれが入っている」ことは、何ひとつ証明していない。発想があることと、それを製品に積むことは、まったくの別物だ。
企業は使う予定のない技術でも、将来の保険として、あるいは他社に押さえられないために、防衛的に特許を出す。これはどの業界でも普通のことだ。「特許がある=実装されている」は、残念ながら成り立たない。
参考ページ →乱数幅変更機能付き遊技機|Google Patents
逆に、完全確率を擁護する側の根拠はどうか
否定側に特許があるように、肯定側にもよく持ち出される根拠がある。
「今のスロットは出玉に関わる抽選がメイン基板に集約されていて、サブ基板でこっそり操作することはできない」「ジャグラーのようなノーマルタイプには有利区間がなく、出玉を制御する仕組みがそもそも積まれていない」といった話だ。どちらも規則の事実としては正しい。
だが、これも特許と裏表の関係にある。抽選がメイン基板にあること自体は、そのメイン基板の中身が完全確率である保証にはならない。ジャグラーのボーナス抽選はもともとメイン基板の仕事で、さっきの特許もメイン基板側の乱数の話だった。
有利区間にしても、あれは出玉を操作する装置ではなく、AT機の出玉を制限するための枷だ。ノーマルタイプにそれが無いのは、制限する対象が無いというだけで、抽選が素直である証明とは関係がない。
つまり、否定側の特許も、肯定側の基板や有利区間も、立場は同じだ。どれも「内部構造はこうなっているはずだ」という外からの推測であって、それが本当かどうかを確かめる手段ではない。
そして内部構造がどうであれ、それを最終的に確かめる方法はひとつしかない。出てきたデータが、理論通りの形に従っているかを見ることだ。
大量の実践データで完全確率は証明できるか
「では、そのデータを集めればいい」
誰もがそう考えるし、私もそう思った。一例でもダメ、特許でもダメなら、大量のデータで統計的に確かめるしかない、と。
これは正しい発想だ。実際、設定ごとのボーナス確率の実践値を大量に集めて「公表値と違うじゃないか」と検証する試みは、世の中にいくつもある。
だが、ここで私はあることに気づいて、手が止まった。
ジャグラーには設定確定演出がない。つまり「これは確実に設定6のデータ」と断定して集めることが、私たち打ち手にはできない。
ホールで集めたデータには必ずいろいろな設定の台が混ざる。そして、設定の違う台を混ぜたデータは、何千台あっても完全確率の検証には使えない。混ぜること自体が、ありもしない偏りを生んでしまうからだ。なぜそうなるかは、それだけで一本の記事になるので別で詳しく書く。

では設定を一つに固定すればいい、という話になるが、打ち手に設定を確定する手段はない。仮に設定を決められるホールやメーカーでも、必要なデータ量が天文学的なうえ、それを集められる立場の者ほど集める動機を持たない。このあたりの話も稿を改める。

結局、完全確率を肯定する道も、否定する道も、必要なデータがこの世に存在しない。誰かがサボっているからではない。設定を分離できないというジャグラーの構造そのものが検証を不可能にしている。
「完全確率だ」も「操作されている」も突き詰めれば、どちらも「証拠を欠いた信仰」なのだ。
それでも、私の中の疑いは消えない
ここで終われば綺麗だが、それでは自分に嘘をつくことになる。
正直に書く。私はジャグラーは絶対に完全確率だと無邪気に信じているわけではない。「今日もインチキピエロか。北電子キモすぎ…」と思いながら打っている日も多い。
メーカーが「規制の枠の中で出玉に起伏を作りたい」という動機を持つのは理解できる。BIG確率が250分の1の台を本当に素直な確率だけで回したらどうなるか。200ハマってBIG、250ハマってBIG、150ハマってBIG。平均付近の当たりがダラダラ続くだけの退屈な台になる。
人を熱くさせるのは、やっぱり連荘だ。私の朝一のあの台も、3回目のBIGがついた瞬間から火がついて、100ゲーム以内にBIG7回・REG3回の10連を達成した。

あのジャグ連の高揚があるから、また台に向かう。だからメーカーが「各ゲームの抽選は独立に保ったまま、波の起伏だけを設計したい」と考えても不思議はない。
だが、ここでも同じ壁にぶつかる。
ジャグ連という現象が存在することは完全確率を否定しない。むしろ完全確率こそが当たりが固まったり散らばったりする現象を生む。確率というのは人間の直感より遥かによく「固まる」ものだ。だから「ジャグ連があるから操作されている」とは言えない。
「ジャグ連が純粋な確率が予言するよりも明らかに高頻度で起きているか」。それが分かれば決着する。だがそれを測るにも結局また、設定の確定した一つの台の大量データが要る。しかしそれは存在しない。
堂々巡りなのだ。でも、この堂々巡りこそが正確な現在地なのだと思う。

では、どう打つのか
「結局分からないのかよ」と思った人へ。最後に、身も蓋もないが頑健な結論を置く。
真実が何であれ、立ち回りは変わらない。
これは2000枚の壁の記事と、まったく同じ構造だ。
仮に何らかの出玉制御があったとしても、長期の平均出玉率は申請値に収束するように作られているはずだ。でなければ型式試験を通らない。
つまり、設定6は長い目で見れば設定6なりの機械割に落ち着く。高設定を掴んで長く打つ、という攻略の幹は何があっても揺るがない。
変わるとすれば、短期の展開の解釈だけだ。その解釈が分かれても取るべき行動は同じになる。
そもそもノーマルタイプの基本は、機械割が自分の基準を満たす台なら、最後まで打ち切ることだ。これは完全確率だろうが、何かの制御があろうが変わらない。設定6を掴んだなら、2000枚出ていようが4000枚出ていようが打ち切るのが正解だ。

ただ、ジャグラーには「2000枚の壁」という厄介な要素がついて回る。これが何かの制御なのか、ただの平均回帰や思い込みなのかは、ここまで見てきた通り誰にも分からない。
だから私は、設定に確信が持てない時に限って、この壁を撤退の目安の一つに使うことがある。たとえばマイジャグなら設定5以上の確信があれば壁を無視して打ち切るし、確信が持てなければ2000枚付近で数回チャレンジしてダメなら見切る。
ここで大事なのは、判断の軸が出玉そのものではなく、「設定の確信度」だという点だ。「+2000枚出た後に冷えた」という同じ場面でも解釈は仮説によって分かれる。
| もし真実が… | その時の解釈 |
|---|---|
| 完全確率だった | ただの上振れ、平均回帰が始まる |
| 何かの制御があった | 冷遇区間に入った |
| 認知バイアスだった | 「壁」は錯覚 |
だが、どの解釈を取ろうと、やることは同じだ。設定に確信があれば続行、なければ見切る。出玉に踊らされず確率で判断する。それだけのことで完全確率かどうかは関係ない。
もうひとつ言えば、どこで降りるかは結局、その人の時間の価値で決まる。
時間を持て余している人なら、割の薄い台でも打ち切る意味はあるだろうし、ほかにやりたいことが山ほどある人なら、同じ台でも早めに切り上げるのが正解になる。確実に勝てるわけでもない以上、万人共通の正解なんてない。
私の場合は、中年になって時間の価値が重くなった分、割の薄い台に長く座るより、さっさと降りて家でやることをやる方が性に合っている、というだけの話だ。
この「設定の確信度で判断する」というやり方は、冷遇モードがあろうがなかろうが揺るがない。
仮に冷遇モードがあって、見切って降りた後にその台が好調に転じたとしても、私が降りた時点での判断は変わらない。薄い側を引いただけのことで、判断が間違っていたわけではない。正しい判断と良い結果は別物だ。


結局、あるかどうかも分からないモードは、運や引きと同じで自分にはコントロールできない。それをコントロールしようとすれば、苦しいだけで何も得られない。
だから私は、目の前のREGとブドウ、設定配分、店のクセといった、自分が手にできる確定した材料だけで機械的に立ち回る。株式投資と同じで、機械的にやらないとメンタルがもたない。
完全確率かどうかが闇の中にあっても、数字だけを基準に降りるという行為は、その闇とは関係なく成立している。

「ジャグラーは完全確率か」という問いに、私は答えを持っていない。たぶん、これからも持てない。
ただ、分からないことを分からないと正確に分かっていること。それ自体がこの台と長く付き合っていくための一番確かな武器なのだと思っている。
もちろん、私は完全確率を信仰しているわけではない。誰かが信頼できるデータやプログラム解析で「これは完全確率ではない」と決定的に証明してくれたなら、喜んで立ち回りを変える。むしろ、そんな日が来るのを楽しみにしているくらいだ。
だが今あるのは、拒絶された特許一枚と、混ぜれば必ず歪むデータと、自分が引いた理不尽な一台分の記録だけ。それで立ち回りを変えるわけにはいかない。確かなものが出てくるまでは確かな数字だけを頼りに打つ。
平凡な一スロッターにできることはそれくらいしかないのだから。


